新スペースブリッジの建設に、到着したのは一面砂漠の星だった。生体反応は感じないが、何かしらのエネルギーがあることが分かり、ギャラクシーコンボイ達は果てしない探検へと出発する。
 ジリジリとボディの表面温度が上がり、冷却装置もやっとの具合だ。途中、球体を半分に割ったようなものが見つかった。彼らはここに不時着したのかと思ったのと同時に、生きだおれていなければいいなと敵ながらも思わざるおえない。
 しばらく進むと、宮殿が見えてきた。
 やや廃退しているものの、立派な作りだと分かる。昔は生物がいたのか、知能をもつ者が。


 結局、彼らとは合わずにこの星での建設が終了してしまった。いいのか悪いのかは判断につきかねるが、橋(ブリッジ)を優先すべきならば気にしてはいけない。今はもう、いつでもいけるのだから。
「ドレッドロック、今度は砂漠の星に来てほしいのだが、いいだろうか?」
 平和連合の議長という立場上、視察をしない訳にはいかない。もちろん、副司令官としてでも、だが。
「砂漠ですか。いいですよ、砂対策ですね」
 くすりと笑ってドレッドロックは答えた。ギャラクシーコンボイも微笑み、星につくと2人はビークルモードで飛行する。
「不思議ですね。生き物はいないはずなのに、どこからかエネルギーを感じる…生命体エネルギーと似た波長を…」
「もしかしたら、この星自体が生きているのかもな」
「星自体が?」
「見えてきたぞ」
 新スペースブリッジ建設時に見つけた宮殿。砂漠にぽつんと佇むそれは孤独でありながらも、どこか神々しさを持っていた。
 ロボットモードになり、2人は宮殿の中をすすむ。
「相当…立派な建物だったんでしょうね」
「どこかしら、セイバートロンの建物にも似ているな。メガロコンボイが誉めていたよ。こんな造形美は作れないと」
「ギガロニアらしいですね」
 宮殿はあちこちが崩れ、太陽の光をじかに受ける場所もある。広さとしては申し分ないものの、奥行きのほうは今にも崩れそうで探検するには危険すぎた。
 完全に崩れるのにはまた、長い年月を要するだろう。誰かが進入したあともあったが、やっとこさ分かる程度であり、風化が進んでいると認識させられる。
「…?」
「どうした?」
 パキリ、とトランスフォーマーの足でさえも軽く折れた枝のような音を立てて、落ちていた柱が2つになる。
 ドレッドロックは聴覚機関が拾った音の方角へ指を差した。
「何か、動いたような…」
「…もしかしたら、彼らがいるのかもしれないな」
 暗闇が広がる奥。ギャラクシーコンボイは後にしようと歩きだした。
「っ、危ない!」
 突然、宮殿が揺れ天井が落ちてきた。とっさにドレッドロックは身をていし、影を突き飛ばす。
「ドレッドロック!」
 大きな音を立てて、宮殿の中に光が降りそそぐ。瓦礫の下にドレッドロックが倒れていた。
「痛って〜…。お、おい! 大丈夫、か…ってサイバトロンン!?」
 むくりと起きあがった水色のトランスフォーマー。強制的に連れられた、サンダークラッカーだった。
 彼を無視して、ギャラクシーコンボイは瓦礫をのかす。うつ伏せになっていた副司令官を仰向けにし、全体にスキャンをかける。
「な、なあ、大丈夫なのか…?」
「見た目以上に酷いな。駆動系をやられている」
 細かいところは医者でなければ分からない。がしゃん、とギャラクシーコンボイはドレッドロックを横向きに抱えあげた。
「俺をかばうなんてどうかしてるぜ…」
 そう言いつつも、ふわりと浮かび恩人の顔をのぞき込むサンダークラッカーの顔は心配している。しかし次の瞬間、ギャラクシーコンボイに見られたことに気づき、たじろいだ。
「ぅ、でも、その。…あんがとな」
 こういうところが、デストロンらしくない、と総司令官は心の内で苦笑する。
「サンダークラッカー。私はこれからセイバートロンに帰還する。機会があれば皆でくるといい」
「…行くことがあればな。あ、ギャラクシーコンボイ。そいつが目を覚ましたらこいつは貸しだと言っとけよ!」
 グシュ、と頷きギャラクシーコンボイは歩きだした。なんだかんだで、彼も心配しているのだと思いながら。


 リペアルームの天井を久々に見た気がする、とドレッドロックは記憶回路の片隅で思った。
「ドレッドロック」
「あ…総司令官…」
 するりと頬を撫でられている感触が、マスク越しながらも伝わる。
 バイザーで分からないかもしれないが、ドレッドロックはアイを細め「心配おかけしました」と言った。
「サンダークラッカーだと気づいていたのか?」
「…確信はありません。ただ危ないと気づいたらすでに体が動いていましたので…」
 彼らは勝手に新生デストロンを名乗っているだけで、実質には活動がないに等しい。害になるような報告も、今のところないのだ。
 敵かどうかを判断する前に、同じ種族としての意識が働いたのだろう。
「貸しひとつ、と言っていた」
「彼が返してくれますかね」
 視線を合わせ、2人はくすくすと笑い出した。
 敵も味方もない。そこにあるのは『仲間』であり『好敵手』だけだ。
 ふいにギャラクシーコンボイが顔を近づけ、ドレッドロックはマスクをしまった。
 1、2秒後に副司令官はすぐにマスクを着けた。
「だが」
 総司令官の顔を見れば彼は微笑み
「君が無事でよかった。君は私に必要な存在だからな」

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