ラチェットに呼ばれ、アイアンハイドはアルファートリンの基地へ向かった。
『戦士』としての自我がある彼は、“治す者”のラチェットとしばしば衝突がある。
傷つくことを嘆くラチェット、傷は勲章とするアイアンハイド。
正反対の2人は、だが、同型ということもあり馬は合う。
基地の中へと入ると、見知らぬロボットが2体。片方はウーマンロボットで、己の彼女とどこか雰囲気が似ていた。
もう片方は…『戦士』だと本能が告げる。
表情の分からないマスクフェイスにシンプルな構造。バランス型で思案者。決して特攻はしないタイプだと。
実力は、くやしいがな。己より上だ。戦ってる姿を見なくとも戦わずとも分かる。実力の差というものが。
「ラチェット、」
「サイバトロンのリーダー、コンボイ司令官だ」
最後まで聞かずにラチェットは答えた。
「っな?!」
思わずすっとんきょうな声が出る。既にリーダーだと、決められているのだから。それも、軍医であるラチェットが彼を総司令官だと認めている。
「コンボイ司令官、彼が先日話したアイアンハイドです」
「聞いたとおりの勇敢そうな戦士だ。私はコンボイ。よろしくな、アイアンハイド」
差し出された手を、アイアンハイドは見つめ続け受け取らなかった。
「…俺は、あなたをリーダーだと認めるわけにはいきません」
「アイアンハイドッ」
胸ぐらをつかみかかりそうな勢いのラチェットを制し、コンボイは静かに口を開く。
「どうすれば、認めてもらえるかな?」
冷静に問いかけるコンボイに、アイアンハイドはひとつ頷く。
実力のある者同士のこういった問いかけは、肯定に近い。
「俺と、戦ってもらいたい」
サイバトロンだからといって、全員が非戦闘という訳ではない。
アイアンハイドのように『戦士』の“業”を持った者やデストロンに立ち向かう者は数多い。
リーダーとなる者は、その知識・判断力、そして実力が決め手となる。
見ず知らず、感じただけでリーダーだと認めるには彼のプライドが許さなかった。
これでコンボイが負ければ、総司令官の資格はない。
結果は――アイアンハイドの負け。
あと一歩、もしくは数歩だろう。その差が彼とコンボイに引き分けを許さなかった。当然わかっていたことだ。
コンボイを見たときから感じた『戦士』の気迫。それなのに敢えて申し込んだのは、アイアンハイド、彼の『戦士』による業だ。
また1人、仲間が増えた。
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