コンボイの元に、次々とサイバトロン戦士達が集まってきた。
プロールやアイアンハイドの呼び込み、サイバトロン同士の口コミだったり、仲間から仲間への誘いで数人が今や大人数になっている。
「こうまで大人数になるとはな…」
苦笑しつつも、どこか嬉しそうな表情をするコンボイを見て、ラチェットも頷く。
「司令官、全員整列しました」
プロールが額に手をあて、報告する。
「よし」
2人をつれ、コンボイは集まったサイバトロン戦士達を見渡せるルームの壇上に昇り、見下ろして声をかけた。
新しい基地を作り、サイバトロン軍の拠点とすることやプロールを副官とすることなどを話す。反対の声は、なかった。
「さて…基地を移した後、それぞれ役割を決めなければな」
現在、サイバトロン軍の統率はとれはしているものの、これといった役職はない。ただ分かっているのは、リーダーがコンボイで、副官がプロール、軍医がラチェットのみということだ。
「私としてはあと数人、リペア係が欲しいですね。幾ら私でもこの多人数は診きれませんよ」
特によくケガをしてくるヒトもいるのでね、と皮肉交じりにラチェットは言った。
「はっはっは。そうだな、戦闘も今以上に激しくなるかもしれん。技術チームにいるだろう」
「司令官。リペア係も必要ですが、一番必要なのは“通信員”です」
情報は何より武器。プロールの進言に、コンボイはひとつ頷く。
「ああ。だが、今いる仲間の中に、その専門員はいなかった…贅沢かもしれんが、一般の中からは選びたくはない」
マスクフェイスの顎に指をあて、どうしたものかと思考回路を巡らせる。
「あ、通信兵をお探しなら1人、知ってますよ」
コンボイと共に記憶回路を探っていたプロール、ラチェットは合流したマイスターにアイを合わせた。
「友人の1人なんですが、実力は保障しますよ。…あのサウンドウェーブと同等ですから」
フッ、とアイの見えないバイザー下にある口で笑みを作るマイスター。
デストロンの情報参謀と同じ実力を持つという、サイバトロン。
「マイスター、彼と連絡はとれるか?」
「ええ。こちらの応答が『聞こえれば』ですが」
「…? そうか」
移したサイバトロン基地に、これまで集ったサイバトロン達の中に巨体なトランスフォーマーが現れ、辺りはざわつく。
トランスフォーマーは鼻歌まじりに、コンボイがいる司令室へと迷わずに進んでいった。
オートドアが開き、マイスターが片手を挙げて挨拶する。相手もまた挨拶を交わす。
身長はコンボイと同じくらいで、真っ赤なボディ。頭部には小さな突起が左右にひとつずつあり、額部は白色。胸部は黄色で、右側にはサイバトロンエンブレム、左側は黒灰色の横線が入っている。
がっしりとした体型で、どこかサウンドウェーブと似ていた。
「俺はブロードキャスト。よろしくお願いします、コンボイ司令官ッ」
あか抜けた声でブロードキャストと名乗ったトランスフォーマーは、コンボイに敬礼する。
「ああ、よろしく。ブロードキャスト」
「そんじゃ、ま。いっちょ…」
胸部にあるパネルを押したかと思えば、彼から流れる、大音量の音楽。
セイバートロン星のパーティでよく使われるノリのいいものだが、コンボイ達は聴覚部を押さえノるどころではない。ただ1人、マイスターを除いては。
「いいねぇ、でもブロードキャスト。音量は落とすべきだよ」
「えー」
「ほら、慣れない人もいるからさ」
マイスターの指差すところには、悶絶し床にとっ伏せているコンボイ達。
「あー、やっちゃった。でもさ、こうやって仲間が増えたんだから、お礼にと思って…」
「時と場所はいいけど、音量注意だよ」
な? と口元に人差し指をあてブロードキャストをいさめるマイスター。
残念と大音量の張本人は肩をすくめた。
急な音を聴いたコンボイ達はマイスターの紹介とはいえ、本当にブロードキャストがサウンドウェーブと同等なのか、にわかには信じられなかった。
「ではブロードキャスト。君はサイバトロンの通信員として、グループを転々としていたんだな?」
「ええ。“ヤツ”の裏をかくために、ね」
「…“ヤツ”?」
コンボイは聞き返したが、ブロードキャストはすぐには答えず、少しメロディーを流し止めてから口を開いた。
「サウンドウェーブですよ」
その一言だけで、何かしらの因縁があるのだとコンボイは悟った。
強力な超音波を使い、小型のトランスフォーマーを扱い、巧みに情報を集め操作するデストロンの参謀。
性格は正反対だが、「音楽」を流したところを見ると、このサイバトロンもまた超音波を使うのだろう。通信員ならば、あらゆるデータ解析も可能だ。
戦争が始まる前は、どうしていたのか分からないが、この2人の関係は似ている。
「…そうか」
それ以上、コンボイは何も言わなかった。深みに入ってはいけないと知っていたからだ。
「さっそくですまないが、リペア…もしくは技術力に優れた者を知らないか?」
「ちょーっと待ってくださいね…あ、リペアはいませんが、技術ならホイルジャックとパーセプターですね。前者はマッドサイエンティストとして有名ですけど、役に立つ物もありますから。後者は科学者でもありますから何かと役に立つかと。あとホイストかなー? こっちは技術専門ですけど、多少のリペアも可能かと思いますよ」
頭部に人差し指を当て、天井を仰ぎながら答えていく。
「他には? 大体の情報は仕入れていますよ!」
自信満々で待つブロードキャスト。ちょっとしたクセはあるものの、『腕が立つ』というのは嘘ではなかった。注文に最も適切な答えを出してくる。
「そうだな…偵察に優れた者がいると助かる。また、個々の能力に長けた者も。……よくばりすぎか?」
間をおいてコンボイは辺りを見回した。
プロール、ラチェット、マイスター、アイアンハイドが目(アイ)でNOと答える。
この中から選ぶのに、否定することはない。
「それならトラックスですね。彼はサイバトロンですが空を飛ぶことができます。あーランボルもだ。偵察ならアダムスかなー“ミニボット”達はほとんど向いてますよ」
「ふむ。…彼らと直接会ってみたい。コンタクトは取れるか?」
「もっちろん♪」
ブロードキャストはブイサインを出してみせる。
陽気な通信員が加入した。