段々と各機能が停止していく。それは白い巨体を持つ彼自身、気づかないうちに。
磁気嵐で通信はできなかった。ただ緊急用の回線はさすがというべきか、ノイズ交じりではあったものの、相手の声が聞こえた。
君だけでも。
相手に届いたかは分からない。それだけを伝えると、彼の意識は闇に落ちてしまった。
過酷な運命の始まりだ。
目(アイ)に光を点し、混濁する頭で呟き、ふと見れば友人がいた。そして、上半身を起こし周りを見れば知らない顔がたくさんあった。
スカイファイアーは心の中でそっと息をついた。
全く知らない彼らに助けられるより、知り合いに友人に助けられる方がいい。
一千万年前と変わらぬ笑顔で友人は――スタースクリームはスカイファイアーの問いに答え、歓迎した。スカイファイアーには再会と共にそんな友人の姿を見ることができて、充分に満足する…はずだった。
どうしてこの星の生物を襲う? 捕らえる? 閉じ込める?
彼らは何もしていないじゃないか。何の徳があるというのだ。
争いごとは嫌いだ。話し合えば分かるはず。
なぜ、どうして、そんな冷めたアイを向ける?
変わらないと感じたのはまやかし? 幻?
つかの間の喜びとは、まさにこのことを言うのだろうか。
スカイファイアーの頭脳回路は混乱していた。こんな友人はかつて見たことがない。
命を軽んじ、弄(もてあそ)ぶ姿など。
――科学者だった頃のスタースクリームは、もうどこにもいない。
いるのはデストロンという軍団の戦士ただ1人。
白と赤と青のボディに黒い頭部、褐色肌の顔(フェイス)、赤いアイ。胸の中心には半透明の黄色いコクピット。
己の胸部に貼り付けられた紫色のエンブレムは、彼の両翼にひとつずつ逆さまに貼られている。
――もう、この紫は必要ない。
時間が2人を引き裂いた。仲間としても研究者としても友人としても。
磁気嵐は未来(さき)を知っていたのだろうか? そんなことはないだろう。
しかし眠りについたことも、掘り起こされたことも、再会できたことも。
誰が知っていただろうか。分からない。
袂を分かつ。この考えに後悔はしないとは言えないが、己の心に従うのに悔いはない。
スカイファイアーはどうしてこんなことになってしまったのか、それだけを考えた。
友人とは共にいたい。だが、やり方には反対だ。同じ道を歩むことはもう二度とできないのか。
一千年万年の間に何があった? 起きた?
飛行するのは友人ではなく、敵。新しくできた仲間の――だと思いたい彼らの、敵だ。
熱放射の元凶である、エメラルド色のクリスタル。その近くの氷を狙い、頭首の横にある小銃を展開し、撃つ。
平衡機能に違和感を感じながら、スカイファイアーはクリスタルの傍へ不時着する。崩した氷にうずもれつつ、一千年前と同じように彼は意識を飛ばした。
今度はいつ目覚められるか、その時はまた、旧友と戦わなくてはならないのかを考えながら。