いつかはこうなると分かっていたのに。
 心の中で、覚悟していたはずなのに。
 どうしようもなかった。

 デストロンの総攻撃に倒れたサイバトロン戦士達の墓地。その最奥に、サイバトロン軍総司令官の遺体が安置された。
 式には生存したサイバトロンと、数多くの地球人が彼の元へ集まった。誰もが、泣いた。
 悲しい、という感情をエアーボット部隊はその時初めて知った。

 葬式が終わった後、エアーボット部隊の5人はその場から離れなかった。はなれたくなかった。
 セイバートロン星で、使われなくなったロケットやらを改造して“生命(いのち)”を吹き込まれたのが、彼らエアーボット部隊だ。そしてその発案は、総司令官。
「不死身なんてこと…ないんだよな」
 1人が、ポツリと呟いた。
「いつかは死ぬ。壊れるもんなんだよな」
「分かってたのによ…」
 2人が続き、1人が頭部を抱える。
 シルバーボルトは、棺桶の傍に立ち蓋の縁をなぞる。
 エアーボット部隊の中で、誰よりも総司令官を信頼していたのは彼だ。
 サイバトロンとしての責務、造られた意味、総司令官の人望。それら全てをいち早く理解したのも。
 高所恐怖症を乗り越えるために、リーダーに任命された。
 理由もはっきりしている。そして、克服はしていないが乗り切ることはできた。何よりも、己を含め部下全員の性格を把握している。そこが、彼の人望なのだろう。尊敬に値する、サイバトロンのリーダー。
 さらに。

 エアーボット部隊の父。

 なぞっていた指を離し、シルバーボルトはキッと顔をあげた。
 まだ、デストロンとの決着はついていない。降伏はしていないのだから。するつもりなど、毛頭ないが。
 落ち込んでいる他の4人の方を振り向き
「私たちは負けていない。戦わないか?」
 と言った。
 元々、運営系で、戦闘向きではないエアーボット。だが、平和を願う心は同じ。
 ゆっくりと他のメンバーは立ち上がり、シルバーボルトの方を見る。
「司令官は確かにいない。だが、サイバトロンがいなくなったワケじゃない。私たちにはまだやることがある」
 仲間はただ、黙っている。何も言わないのはみんなが心のどこかで同じことを思っているからなのか。
「私たちは司令官の意志を継ぐべきではないのか? 私たちはサイバトロン戦士だ。彼は私達のそばにいる。平和になることを願っているはずだ」
 段々とシルバーボルトの声が大きくなる。
「いつまでもうじうじしていては、デストロンに笑われる! 私たちは平和になるように戦うべきじゃないのか!?」
 4人は互いに顔を見合わせて、頷く。
「同意見だ、シルバーボルト」
 1人が答えると全員が頷いた。
「みんな…」
 まさかこうも速く意見を聞いてもらえるとは思わず、シルバーボルトは嬉しいやらなんやらで顔をほころばせる。
「うしっ。なら新司令官に会いに行くぞ!」
 スリングがしき仕切り、3人もついていく。
 シルバーボルトも立ち去ろうとして、ドアの手前で立ち止まり、後ろを向く。

「行ってきます、父さん」

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