テレトランワンのメンテナンスをすませ、ラチェットは後ろに立っていたコンボイを見上げた。
「終わりました。これでいつ、デストロン共が現れても大丈夫です」
「ご苦労だったな、ラチェット。できれば出てきて欲しくないものだが…」
が、そうは問屋がおろさない。テレトランワンがデストロン警報を鳴らす。
「サイバトロン戦士、トランスフォーム! 出動!!」
『はい!』
コンボイに続き、ラチェット・アイアンハイド・トレイルブレイカーにバンブルが基地を出る。
サイバトロン基地前方の崖の上に、メガトロンとサウンドウェーブ、それに旧ジェットロン達が銃を構えていた。
「出てきたな、コンボイ!」
「メガトロン、いったい何が目的だ!?」
「問答無用! デストロン軍団、アターック!」
がしゃがしゃ動く音がして旧ジェットロン達は体中にある武器を一成発射する。めずらしくサウンドウェーブも加勢している。
「くそっ、奴ら何が目的だ!?」
「わぁっ、コンドルが来たよー!」
銃撃戦の中、アイアンハイドが毒づくとバンブルが頭を抱えて逃げ回ってくる。
滑空しながら自由自在に動き回るデストロンの航空兵。
「中には入らせないよ。フォースバリアー!!」
虹色に光る球状がトレイルブレイカーの前に貼られ、コンドルは軽くぶつかりメガトロンとサウンドウェーブの間に戻る。
「司令官、もしかしたらメガトロンは“あれ”を狙っているのでは…?」
「そうか。サウンドウェーブが攻撃主体なのも…! いかん、バンブル!」
「了解っ!」
ラチェットの進言にコンボイはミニボットを呼ぶ。
フォルクスワーゲンへと変形したバンブルはアークの中へと消えた。
「…! フレンジー、ランブル、バズソー。イジェークトッ!」
三つのカセットが2体の人型と鳥型へと変形する。そして彼らはバンブルの後を追いに走り出した。
『行かせるか!』
赤と白の巨体が通せんぼするも、足元をくぐり抜けられる。
銃撃から取っ組み合いに変わった頃、フレンジーとランブルがアークから出てき、バズソーが逆さ吊りにされて出てきた。
「人ん家にズカズカ入り込んで来てー、君らは礼儀ってモンを知らないのぉ?」
暴れ疲れたのかグッタリとしてるバズソーを掴んでいるロボットが現れる。その声は、していることに腹が立つほどに陽気だ。
全体的に赤く、特徴ある耳に白い額、胸部は黄色で右側にはサイバトロンエンブレムがあり、左側には黒灰色の横じまがある。灰色の両足にはスピーカーがついている。モニターで見た、新たなサイバトロン戦士。
「…ん、バズソー君。帰りたいよねぇ、はい」
ぱっ、とそのロボットは黄色い鳥の脚を離してやる。地面すれすれのところでバズソーは空へ舞い上がった。
「えーっと…」
ピッピッ、とロボットのアイが味方と敵を見据え、記録された名前と能力を照らし合わせる。
くるりと一周したところで、腰部に片手をあてポーズをとった。
「呼び名がないと不便なので、ここらで自己紹介しまーす! 俺っちは『ブロードキャスト』。よろしくぅ!♪」
ハイテンションな彼に両軍が呆気にとられる。何より戦場でいきなり名乗るものなのか? それもこんなに明るく。
「あれだね?」
ガシャリとブロードキャストは銃身の長い武器を片手で持ち上げ、砲頭をサウンドウェーブに向けた。
「覚悟してくれよ?」
かちっと音がしたかと思えばメガトロンとサウンドウェーブの立っていた場所が崩れ、2体は地面へと叩きつけられる。
起き上がろうとしたサウンドウェーブの頭に銃が突きつけられる。――ブロードキャストだ。
「音は悪用するためにあるんじゃないよー? ましてや攻撃だなんて…。 そういう悪い子にはおしおきしなきゃ、ね…」
そう言ってブロードキャストは片足をあげ、スピーカーから音を出した。
言動が一致していない。やるのならば一思いにやればいいのに。
所詮はサイバトロンが造った甘ちゃんか。それとも――
「ッ、イカレサウンドガッ」
勢いよく起き上がり、回し蹴りを決めサウンドウェーブは飛び上がる。それにメガトロンも続き撤退命令を出した。
デストロンが去って行くのを眺めながら、ブロードキャストは呟く。
「サウンドシステムの面汚しには、言われたくないねぇ」
アークの中、テレトランワンのモニターから外の様子を見ていたマイスターは、後ろで待機していたパーセプターの方へ振り向き
「その面汚しを元に造ったことは、黙っていようか」
と苦笑しながら言った。
「そうですね」
それにパーセプターも同じように答えた。