「…うそ」
ブロードキャストは我が聴覚機関(みみ)を疑った。
「嘘デハナイ」
そう答えたのはサウンドウェーブ。
いつもの如く、戦闘となったサイバトロンとデストロン。
ブロードキャストは戦場近くの洞窟へサウンドウェーブを追い詰め、深い所まで来た。
洞窟は出口でもあるのか奥が見えない。ところが、サウンドウェーブはそこから逃げようとはしなかった。
不審に思いつつ、ブロードキャストが1歩近づいたとき、デストロンの情報参謀は信じられない事を言ってきたのだ。
「なにかの作戦だろ? 貴様が俺を…」
「違ウ。俺ノ本心ダ」
「嘘だっ! そんな…お前が、俺を…好き、だなんて…」
今まで、この時点でさえも同じサウンドシステム同士の戦いをしていた。相手はデストロンで、己はサイバトロン。それも、同性だ。
散々言い争って、戦ってきたのに、今更信じられるわけがない。
「俺モ信ジラレナカッタ。ダガ、今日オ前ニ会って確信シタ」
1歩、サウンドウェーブはブロードキャストに近づいた。
「俺ハオ前ガ好キダト」
青い手が白い頬に触れる。払われるかと思ったが、それは杞憂に終わりそれどころか、添えた手に手を重ねてきた。
一瞬、サウンドウェーブの肩が跳ね上がる。
「……あーあ、先に言われちゃった」
「…ブロードキャスト?」 「ビックリすること? 君には心を読む、っていう迷惑極まりない便利機能があるでしょ」
ブレインスキャンのことか、と思う。使わずにいたのはわざとなのだがお構い無しにサイバトロンの通信員は続ける。
「大体告白なんておたくのノリじゃないでしょー? …そういうのは俺っちのせ・ん・も・ん」
手を放し、人差し指を立ててチッチッと振る。
「答えなんて言わなくても分かるよね? OK?」
当たり前だという風に、サウンドウェーブは彼の手を取った。ぎゅ、と握り返される。
洞窟に入って来た道を戻り出口まで2人はずっと手を握っていた。
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