戦闘中、サウンドウェーブはブロードキャストを洞窟内へと追い込んだ。出口の見えない洞窟の奥深くに来ると、彼は攻撃をやめブロードキャストへと近づく。
ブロードキャストは寄ってくる敵から逃げようともせず、迎え撃つこともしない。
そっとサウンドウェーブの手が彼の頬へ触れた。
「やけに優しいじゃないの」
触れた手を払うこともなく、むしろ重ねてブロードキャストは口を開く。
「わざと外してたでしょ?」
「…怪我ヲサセタクナカッタ」
「ははっ、今更じゃん?」
重ねていた手を離し、つ…と胸部の中心にある青紫色のマークへ指を滑らす。
「敵同士なんだぜ?」
下から覗くように見る彼は挑発しているようにも見える。撃って見ろよ、と。だが、サウンドウェーブは銃を突き付けることはしない。胸にある手首を掴み、引き離す。
「…戦闘中ハソウデモ今ハ違ウ」
淡々といつもと同じ調子で答える彼に、ブロードキャストはきょとんとする。
「今ハ、恋人ダ」
瞬間、ブロードキャストは顔を真っ赤に染めた。
改めて、面と向かって言われたことで体内温度が上昇したのだ。
「…きみってさぁ」
「ナンダ」
「恥かしいよね」
「…………」
否定しないことに気をよくしたのか、ブロードキャストはサウンドウェーブの手を握り、奥へと進む。
「せっかくだし、デートしよっか」
反論は、なかった。
進めどすすめど、出口らしきものは見えてこない。
どこまで続いているのか、行き止まりすらもなく道なき道を2人は手をつないで歩いていた。
鍾乳洞が光ゴケの大群に照らされ、美しく光る。調べごとが好きな友人がいれば入り浸ってそうだ、とブロードキャストは笑った。
「…何ヲ笑ッテイル?」
「君の所の裏切り者君を、ね」
ちゃかして言えば何も尋ねてこない。“あの”機能を使う様子もなく、ただ黙ってブロードキャストは歩を進めて行く。
ぴちゃん、と鍾乳洞から落ちた滴が溜まっている場所でサウンドウェーブは立ち止まった。どうかしたのかと振り返るブロードキャスト。
手を繋げたまま、サウンドウェーブは彼を引っ張り口づける。
すぐに離れたその行動にブロードキャストは顔を真っ赤に染めた。
「え、…」
「戻ルゾ」
「え、あ、…」
手も放し、道を戻っていくサウンドウェーブの背を慌てて追いかける。
サウンドウェーブはマスク越しに笑みを浮かべていた。
「途中デ発砲スル。逃ゲルフリヲシロ」
「なんで俺っちがピンチなわけー!?」
back