するり、と撫でられる。
 人間で言う耳の部分で、感覚はある。だからそうやって軽く触られると身震いしてしまう。
「ちょ、くすぐったいよ」
 苦笑して言うと「ソウカ」と答えてふっとマスクをあてられる。ひやりと冷たさを感じ、びくりと震えた。
 予想に反して、冷たい。
「何するのさっ」
「別ニ」
 もーと頬を膨らませれば小さく、ほんの小さく「プ」と吹き出される。笑った? と聞けば黙ったまま。
 ずるい。
 視線も口元もあの能力も。
 すべて隠して、すべて読み取って。優秀で可愛い部下達もいる。
 ずるい。
 ふいにガシャリと音がして相手を見れば、愛銃をつきつけたまま変わらない顔があった。
 バイザーもマスクもつけたままの。
 ガシャリとこちらも愛銃をつきつけ、口の端をあげる。この後どうすればいいかなんて分かっている。
 ゆっくり1歩ずつ、横に歩き日に照らされる。打撃音の中、ゆっくりとそのままの体勢で進んで…後ろに跳んで発砲。
「覚悟しろ、このファミリーサウンドシステムの面汚しがっ!」
「黙レ、獣耳イカレサウンドガッ!」
「…君達、それってけなしてるの?」
 ――あとはお決まりの台詞。ツッコミは不要です、副官さん。

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