煙の中、告げられた言葉に返したのは本音。
いつかは着けなきゃいけない。たとえそれが、恋人同士でも。
「手加減はしないからな!」
「ソレハコチラモ同ジコト」
通信のみで伝えれば、そう答えられる。
次の瞬間には、ショットガンとライフルを構え、発砲。互いの銃を弾き飛ばして、掴みかかる。
最初は胸に、次は頬に、頭に。
ありとあらゆる場所に拳を叩き込み、緩んだ配線を狙って、腕を取り、投げ飛ばしたり。
勝利を得た歓喜かと思えば、悲鳴に変わり爆発音を聴覚機関(みみ)にした。
仲間へ己よりも、大事なことを優先させろと伝える。
そこで、意識が途絶えた。
別の星へと移民していた仲間に助けられ、早速行動を開始する。
敵の基地へと乗り込み、情報を探る。アクセスすれば聞きなれた名前が。
「サウンドウェーブの奴も、サウンドブラスターとして生き返っていたのか」
好敵手のいる惑星へ向かう、と通信を入れ侵入する。
邪魔者を片付けつつ、コントロール室へと。
目的のものを破壊して、帰還したあと自室へと戻る。
部下たちにはせっかくだが、1人にさせて欲しいと言い、ベッドへ腰かける。
専用の通信を開けば、この場所へ来いと指示される。
向かった先は、ある洞窟。
洞窟の奥まで来ると、ひとつ息を吐いて岩へと腰かける。チャ、と黒い銃口を向けられた。
「殺すなら、とっとと殺(や)りなよ」
相手を見ずに、軽口を叩けばゴリと押し当てられる。
「……」
「……」
一向に発砲しない相手を見上げる。
ぴちゃん、と水音がした。
銃口を放し、そっと黒い腕が伸びてきて――抱きしめられる。
青くなった腕を回せば、より強く。
何も変わらない。声も体も温もりも。
ふと顔を見ればデコピンされてしまう。
「って!」
「仮ニモ敵同士ダロウ、ブロードキャスト」
「いいじゃんか、今は違うんだし。それに俺っちはツインキャスト! お間違えなく」
額を押さえつつ、ツインキャストは言った。それをマスク越しに笑う。
「ほっんとに君は…!」
ぷいと横を向く彼に、声を抑えて笑う。本当に、何も変わらない。
「クク…」
「サウンドウェーブ!」
笑うなっ、と名前を呼べば「サウンドブラスターダ」と訂正される。
「わざとに決まってんだろ、この面汚し!」
「クク…ソウカ。ツイニキタノカト思ッタゾ」
「ばかっ!!」
悪態をつきながらも2人は笑っていた。生まれ変わっても、根本的なものは何も変わっていない。
そろそろ、時間だ。
2人は強く抱きしめあってから離れ、ゆっくりと時間差をかけて洞窟をあとにした。