「今はまだ…帰れそうにないが、君との約束は果たす」
 月明かりが、コンボイとエリータワンを照らす。エリータワンはそっと、彼の手に己の手を合わせた。
「セイバートロン星は…大丈夫。安心して、コンボイ」
 400万年以上、何億光年と離れていても2人の絆は決して消えることはない。
 最後まで言葉にせずともコンボイは分かっていた。彼女の言うことが。
 そしてエリータワン。彼女もまた彼の言うことが分かっている。
 変らない想いを2人は互いに持っている。

「ねぇっ、あの女の子だれっ!?」
「会長さんだよ。地球でえらい人」
 腕をひっぱるムーンレーサーに、少したじりながらパワーグライドは答えた。
 2人で街中に出たとき、1人の女性がパワーグライドにすりよってきたのだ。まるで仲睦まじい風に。
「それだけ?」
「そ、それだけ」
 じとっとムーンレーサーは彼を見下ろす。背の高い彼女におもわず発生装置がどもってしまう。
「ふーん…まあ、いっか。信じてるからねっ、パワーグライド」
「も、ももちろんだとも。可愛い子ちゃん…」
 腕に絡み付いてくる彼女をパワーグライドは汗だくで見るしかなかった。

 彩られたもみの木を見ながら、アイアンハイドは水色のウーマンサイバトロンの肩を抱く。
クロミアはその手を払わず、そっと体を寄せる。
「俺と一緒でよかったのか?」
「そうね…あなたとじゃなくてもよかったけれど…」
「おいおい」
「くやしいけれど…あなたとじゃないと、ダメだわ」
 冗談だと分かっているため、アイアンハイドはその手をはなさずクロミアの腰に回す。抵抗せず、クロミアは彼の背に身を預けた。

 遠のくサイレンを見送りながら、インフェルノはため息をつく。
 聖なる日であろうと事故は起こるものだ。
「やれやれ。折角のデートが台無しになったな」
「でも、あなたと久しぶりに組めてよかったわ」
 幸い、彼女のおかげでけが人はでなかった。初仕事にしては上出来だ。これも、セイバートロン星でのたわものだろうか。
「んじゃ、続きとしますか」
 消防車に変形し、助手席のドアを開ける。
「あら、乗せてくれるの?」
「レディーを働かせたからね」
 嬉しいわ、とファイアースターは喜んで乗り、サイレンを消した消防車は光る闇夜に消えていく。
 先ほどまで聞こえていた消火活動を知らせる音のかわりに、清らかな音楽が2人を包むのだった。

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