ガシャリ、と2体は倒れた。
 いつもの取っ組み合いから、コンボイが下にメガトロンが上になるように。
 メガトロンは左腕に装着した融合カノン砲を、コンボイの右肩へ突きつけ、右口端を吊り上げて不適に笑う。
「このまま貴様を死なすのも良いが、じっくりと料理するのもいいな」
「クッ…!」
 敵に全身を見せ、起き上がるために次の行動をしようとしていたコンボイは、それを見て気づいてしまった。
 笑っているはずなのに、悔しそうに歯を食いしばっているようにも見えるのだ。
「コンボイ、壊してやろうか? この正義の証を。貴様の誇りを」
 そんなコンボイの視線など気にもとめていないのか、メガトロンは力を緩ますことをしない。
 サイバトロン総司令官は融合カノン砲を見つめる。エンブレムは左肩にもある。なのになぜ、彼はわざわざ撃ちにくい右肩へ突きつけたのだろうか。彼に迷いがあるとでも言うのか。
 破壊と殺戮を好む頂点に立つ者に。
「…メガトロン。ならば撃ってみろ」
 ボディに象られたのは誓いでしかない。識別証でしかない。
「証を壊されたとして…私の誇りまでが消えるわけではない」
 水色のアイがメガトロンの赤いアイに突き刺さる。恐怖を感じぬ強い光を、彼は睨みつけた。
 しばらく2体は互いを見据え続ける。
 頂点に立つ者だからこそ分かる、生と死の、戦いの緊張感。
 この視線を逸らせば相手に飲まれる。動けばどちらかが倒れるまで闘いは続く。
 そんな思惑など片隅においやるほど、張りつめた空気。
 倒さなければならない相手だからこそ歯痒さを感じる。
 引き金がひかれ、証が壊されるか。
 空色の光に呑まれ、射られてしまうか。
 どちらが先になるかは分からない。
 2体は互いの視線を絡み合わせていた。

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