過去からスタースクリーム達は帰ってきた。
 遺跡に入って行ったと仲間から報告を受け、帰還したラムジェット・フレンジー・ジャガーに尋ねれば、口を揃えて「過去に行って来た」と言っていたために状況は飲み込めたのだが。
 メガトロンにはどうしても解せないことがあった。
 ホイストとワーパスをみすみす逃してしまった原因。一番に出てきたかと思ったらボディアタックをかました張本人。
 スタースクリームのことだ。
 飛びついてきたと思ったら、開口一番に情けない声をあげる。今にも泣き出しそうなほどの。
 2体のサイバトロンを逃してしまったのを責めたてても聞きやしない。それどころか、
「俺達に会えて嬉しくないんですか?」
 これまた情けない顔で見るものだから、殴る気力も失せるというもの。
 諸手を挙げ、メガトロンは大声で叫ぶしかなかった。

 報告内容によれば、相変わらずスタースクリームがま・た『ニューリーダー』宣言をしてサイバトロンを追い詰めたと言う。途中までは上手くいっていたが非科学的な事が起こり、巻き返されピンチに陥ったとも。
「それで現代に帰還した貴様はソイツが怖くて儂に飛びついたという訳か」
「べっ別に抱きつきたくてやった訳じゃありませんぜ? たまたま貴方がいただけで…っ」
 頭部を抱え、メガトロンはため息をついた。
 基地のコントロールルームで、ボディアタックをかました張本人にも確認をとればこの態度。あの情けない顔は心底安心したとも書いてあったはずなのに。
 確かにメガトロンはその時代におらず(実際は眠っていたのだが)、指示を出したのがスタースクリームならば別段『リーダー』としても良かった。ただ、こうやってタイムホールを出て抱きついてくるようでは、まだまだデストロンの『ニュー』リーダーにはなれないのだけれど。
「ならばあの場に儂ではなく、他の誰かだとしてもお前は抱きついたのか?」
「そ、それは…」
 まっすぐに、迷わずに、スタースクリームはメガトロンに抱きついた。それは誰の目から見ても明白。
 たまたま、というのならあの場所に、例えばサウンドウェーブがいたならば彼は情報参謀に抱きついたのだろうか。
 その問いかけに、元ニューリーダーはしどろもどろになり、アイを右斜め下におろす。
「…………ぜ……」
「ん?」
 ぽつりと呟かれた言葉は破壊大帝の聴覚機関に届かず、彼は聞き返した。
「っだから、あんた以外に抱きつけるわけねぇですぜっ…!」
 投げやりにスタースクリームは言った。顔全体の熱機関が集中しているのか心なし赤い。
 その様子が可笑しくて思わずメガトロンは噴き出した。
「な、なにが可笑しいんです? 人が真剣に話しているっていうのに…」
 それのどこが真剣だ、とメガトロンは問いたくなった。いや、本人は真剣そのものなのだろう。ただ、あまり素直になれない性格であるから、こんな風に顔が赤くなるのだろうけれど。
「それが分からんようでは『ニューリーダー』にもなれんな」
「はぁ?」
 意味が分からず首部を傾げるスタースクリーム。おそらく、ついにボケが始まったか、とか考え始める頃だろう。
 そんな事を口にすれば即刻融合カノン砲が火を噴くのだが。
「サイバトロンを逃がした罰として、1人でそのエネルギーを作れ。誰の手も借りるな。いいな?」
「ひっ1人でですかい!?」
「当たり前だ、ばか者。ちょうどいらなくなった鉄格子やら金属やらがあってな。処分してエネルギーが得られるならば、こしたことはない」
「…はいはい。分かりましたよっ」
 どこか偏狭の星に追放、土に埋められるよりはましかとスタースクリームは渋々ルームの出入り口へと向かう。
 出て行く姿を見送りながら、メガトロンはモニターへとアイを滑らした。
 機転を利かせればその頭脳は活躍する。
 乗り越えようとする意思は認められるが、まだまだ油断や隙が大きいため、つけあがるとすぐに宣言する。それさえなければすぐにでもリーダーの座は渡せるのだが。
 頭脳回路に痛みが走り、メガトロンはまた頭部を抱えた。

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