「よく来てくれた。座ってくれ」
そう言って彼は私を部屋の奥へと招く。彼に隠れて見えなかったが、4人がけテーブルと椅子が置いてあった。入ったときから思っていたことだが、本当に広いな。この部屋は…。
「失礼します」
扉を背に座ると、彼がティーカップを置き向かい合わせに座った。なんだ、この緊張感は。
「紅茶でよかったか?」
「ええ、ありがとうございます」
鼓動が収まらない。彼とこうして飲むのは初めてではないのに。――気づかなければ、こんな風になることはなかっただろう。
「ドレッドロック、メンバーに変更する余地はありそうか?」
「現状維持、ですよ。とくに問題となる箇所は見当たりません」
ほら、やはり仕事だ。
他愛ない、いつもどおりの業務報告に世間話。彼の両親と彼は違うのだから。
彼が――ギャラクシーコンボイ総司令官が、同性を好きになるという保障はどこにもない。いくら同性の親から生まれたからと言って。
「ギャラクシーコンボイ総司令官」
「ん?」
「――いえ。おかわりをしても、よろしいでしょうか?」
正直にこの気持ちを認め、伝えられたらどんなに楽だろうか。しかし傷つく覚悟などないのだ。今の私には。
「ああ、もちろんだとも」
フッと微笑み、ギャラクシーコンボイ総司令官は私の空になったティーカップを引き寄せ、ポッドから紅茶を注いでくれた。
温かいストレートティーに口をつけ、私達は何も話さなくなった。これは少し辛い。鼓動が早くなる。しめつけられているような感じがする。
これを飲み干したら部屋に戻ろう。
「ドレッドロック」
カチャリと彼がティーカップを置いた。空だ。
「なんですか?」
レモンイエローの瞳(アイ)が私を見据えている。何かを決意したように、そっと私の隣へと座る。
――これは期待してもいいのだろうか?
隣に来たまではいいが、なかなか切り出さない。本当に本当に、期待してもいいのか?
彼も私を―…。
紅茶をひと口のみ、彼と向き合う。予定変更だ。
「ギャラクシーコンボイ総司令官。貴方が、好きです」
目の前が真っ白になるとはこのことか。体中の熱があがり、彼を直接見ることができずに俯いてしまった。そんな私をギャラクシーコンボイ総司令官は抱きしめられた。
「私も好きだよ。ドレッドロック」
彼の背に腕を回し、数秒間私達は抱きしめあっていた。
幸せすぎる…彼と両想いだったことが、彼が私を好きになってくれていたことが。
背に回された腕の力が緩まり、ギャラクシーコンボイ総司令官の右手が、マスクを外したままの顎に添えられる。上を向かされ、私はバイザー越しに瞳を閉じた。
互いの唇が触れ、離れる。
見つめ合い、私たちはどちらからともなく口づけ、しばらくして放すと笑いあった。