二人は同士だった。
 二人は仲間だった。
 二人は親友だった。
 二人は敵…だった。


 秘密基地に案内されると、ライブコンボイとオートボルトは改めて自己紹介をした。
 彼等二人が、スプラングの孫や『ある人』の子供だと言うことも伝えられた。
「みんなの事は爺から聞いてる」
 淡々とした口調でライブコンボイは言った。
「前チームコンボイメンバーの子供である事、チームロディマスの子供である事」
 そして、とエクシリオンの傍に立つ。
「ロディマスコンボイ殿とホットショット殿の息子がいる事」
 全員が空けた口を塞ぐことが出来なかった。
 しかし誰よりも驚いていたのはオートボルトだ。
 彼の親である『あの人』はエクシリオンの母方にあたるホットショットと深い繋がりを持っていたのだ。


 晩、オートボルトは基地の前に座っていた。
 山岳地帯で空気の澄んでいる田舎町の近くにあるここの空には一杯の星が輝いていた。
「スターウオッチングかい?」
 後ろからした声に振り向くと、エクシリオンが立っていた。
「キレイだよなぁ俺、こういう景色好きなんだ。なんてーの、夜のドライブにもってこいの景色だしよ」楽しそうに話す姿は確かに、 チーム最年少を思わせる。だが、母親から受け継いだと思わせるレース好きな所と、軽く跳ねた髪形は昔会った、彼の母方と瓜二つだった。
エクシリオン」
「ん?」
 言わなくては。
 オートボルトは抑え切れなかった。どうせ、何時かは話さなくてはならないだろうという気がして。
 言っても言わなくてもいいものだからこそ、話したくなったのかもしれなかったが。
「俺は、お前の母親に会った事がある」
「母さんに?!」
 母親と言っても、エクシリオン達彼等の親は両親とも男だ。
 彼等は一部を除き、ほぼ全員が同性の親から生まれた。
「エクシリオン。聞いたことあるか?お前の母親は昔、親友だった仲間が、敵になったという話を」
……ある」
俺はその敵になった親友の息子だ」
 沈黙が二人を襲った。
 敵になったとはつまりデストロンになったということ。
 戦いのあと、行方不明になったと聞かされていたが、目の前にいるのはその息子。
「母親はサイバトロンだ。何故どうやって知り合ったかは知らないがな」
 知りたくもなかった。オートボルトは彼自身、父親を嫌っていたのだから。
「『あの人』のお前が?」
 地球デストロンを狩るハンターの彼が、サイバトロンとデストロンのハーフ?『あの人』については確かに聞かされていた。
 オートボルトは頷き、空を仰いだ。
「母親の血が強かったからな。サイバトロンとして生まれて来たってワケだ。ま、父親の方も元ではあるが一応サイバトロンだったしな」
 自然。確かにそう考えると自然だ。
 彼がサイバトロンだというのが。
お前が、あの人−『ランページ』さんの息子だったとはな
「憎いか?」
「は?!」
「デストロンの父親をもつ俺が」
「何を突然んなワケねぇだろ。確かにデストロンは嫌いだ。だが、お前が憎いなんてこれっぽっちも思わねえぜ。例え、サイバトロンとデストロンのハーフだとしても」
 星空を見上げながらエクシリオンは言った。
 驚いた表情でオートボルトは彼の顔を見た。
「何故だ?俺は、俺にはデストロンの血が流れているんだぞ?!」
 ハンターになったのは、そうすることで自分に流れる敵の血を忘れる為。父を忘れ去る為。
 はあ、と溜め息が聞こえた。
「関係ないね」
「な、に?」
「オートボルト。お前にデストロンの血が流れていたとしても、お前は『ランページ』さんじゃないんだ。お前は、サイバトロン。オレ達の仲間だ」
 クリアットブルーの瞳が、薄緑色の瞳を射ぬいた。
「オレは気にしない」
 何かが、オートボルトの体を突き刺さり抜けていった。
 前にも同じ事をパートナーに言われた。
 遥か昔、地球派遣が決まって彼に出会った時に。
<ハーフだろうと僕は気にしないよ>
 何故彼がそう言ったのか、ようやく分かった気がした。
 ははっ、とふいにオートボルトはから笑いした。
 そう思い悩む事はないのだ。仲間が許すなら気にしないのなら、それだけで十分なのだから。
 銀色の粒が瞬いた。

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