半透明な薄緑色は小さな粒となって昇り消えていく。それは、彼のスパーク。
今すぐに側へ行って助けたい。何か出来る訳ではないが、叫びたい。救いたい。無邪気にはしゃぐ子供は幼い。この雰囲気が分からないのだから。
胸が痛い。
止めて。失いたくない。
「私は生き続ける」
何を言っているの? 貴方の体はもう…。
――……ああ、そういう事なのですね。
引き換えの代償は大きい。それはこの宇宙に比べれば小さいかもしれない。だけど。
「ありがとう」
我々にとって彼はとても大きな存在だったから。
人間だったなら大粒の雫が流れているだろう。
さよならは言わない。永遠の別れではないのだから。
一隻のポッドを見つけ、ベクタープライムは中に入った。
自分の体よりも若干小さなロボット――時の中で知った『マイクロン』と呼ばれる存在。
不思議な電子音に始めは戸惑ったがそれが彼等の『言葉』だとすぐに分かった。唯一、一人だけ『共通』できる者がいたのには驚きだったが。
「わたくしはホップ。隣にいるのがブリットとバンパーです」
発射スイッチを誤って押し、この時空の流れに迷い込んだのだと、ホップは言った。
コントロールパネルに近付くと、一枚手の平サイズのパネルがあった。それを右の掌にのせると、パネルは白い『マイクロン』へと変わった。
ブリット、バンパーと同じような電子音でも不思議とその白いマイクロンの言葉はすぐに理解できた。
ポッドに記録されたデータを見ながら、白いマイクロンは一つのデータをスキャンし、変形すると、ベクタープライムの左腕に停まった。
「…一緒に来るか?」
問い掛けは『マイクロン』達全員に向けたものだった。
繰り返される生と死。手を貸すことの出来ないもどかしさの中を旅して来た者に出来た仲間、パートナー。楽しささえも、“時空の穴”が飲み込もうとはその時は分からなかった。
一緒に入れて幸せでした。これからも共にいられると思っていた。願っていた。
「生き続ける。私は時間という中で」
貴方は時空監視者。時の歪みを、狂いを、誤りを正す人。
未来(さき)がない事などないから、貴方は必死になる。我々を助けてくれた。もし、巻き戻せる力があったなら、貴方と別れなくてすんだかな?
何も考えられなくなる。頭脳回路が停止しそうになる。
拾いに行きたい。半透明の粒子を。――スパークを。
「また会うだろう」
嫌だ。居なくならないで。側に居て。もっと過ごしたい。
理解しててもやっぱり言っちゃう。我が儘だって分かってても。
消えていく姿に、人間達は涙を流す。はしゃいでいた男の子も。
――ああ、なんて羨ましい。涙を流せるなんて。
でも。
別れは言わない。貴方とは会えるから。
何時でも。
今は、バイバイ。また会いましょう。何時の日かこの宇宙が救われた時に。
「ルーツ…」
…大丈夫。ホップ、お礼をしよう。彼に。
「…そうですね。わたくし達もギャラクシーコンボイ様達と同じように」
迷子の我々を拾い、世話をしてくれた。彼はとても大きな存在。
ゆっくり額に手を当てる。短かったね、バンパー。ブリット。だけど彼は居るよ。忘れない限り存在する。
口ずさむ“歌”は聞こえた? 今度会った時は一緒に歌いましょう。
Bye-bye,ベクタープライム…………。