チャットルームの机に置かれた大量のイチゴ。
 それらを小さな透明な器に分け、スカイファイヤーは配っていった。
 いつものメンバーに加え、チームロディマスとウイングセイバーにスペリオンもいる。
「まだたくさんあるからな! いっぱい食えよ!」
 配り終えるとそう叫び、バイザー越しにウインクする。
 ティーカップやコーヒーカップも配られ、スカイファイヤー、グランドコンボイ、ウイングセイバーがマスクを外すと、一斉に食べ始めた。
 丸みを帯びた赤い逆三角形の果物。つけられたままのヘタを取り、そのまま口の中にほうりこむ者もいれば幾つか取ってから食べ始める者もいる。
「副司令殿、いったいどうしたんでありますか?」
 この大量のイチゴ、とロードバスターが尋ねる。そういえば、とホットショット・インフェルノも上司の方を見た。
「この前任務で言った星にあってな。俺らでも食べれるっつーか食えた。そこで採ってきたんだよ」
「原住民からお礼に貰ったものだ。たまにはいいだろうと思ってな」
 ぱくぱくと口にほうりこみながら答える副司令官のあとを、グランドコンボイが継いだ。
「確かに、たまには悪くないな」
 コーヒーカップを持ち上げながらロディマスコンボイが言う。その左横ではレッドアラートがヘタをとらずに食べていおり、反対側ではランドマインがちまちま取っている。
「このような食べ物があるとは…」
「そっか。スペリオンの時はなかったもんな」
 ティーカップに口をつけながら嘆息する古代のトランスフォーマーに、ホットショットが相槌を打つ。
「このままでもおいしいんですが、調理してもいけそうですね」
 ウイングセイバーの言葉に「そうだな」とグランドコンボイは頷き、スカイファイヤーは待ってました、とばかりに机の上にドンッ! とチューブを置いた。
「ちょっ、副司令!」
「オイラの紅茶がー!」
「あ…」
 勢いがよすぎたのかホットショット、レッドアラート、スペリオンにインフェルノのカップから中身がこぼれた。
 ウイングセイバーがやや慌てながら、台拭きを彼らに回す。
「悪いわるい。で、これなんだが“コンデンスミルク”っつてな。イチゴにかけると結構上手いぞ」
 赤と白色のチューブを空け、イチゴにかけるスカイファイヤー。白く細いクリーム状のものが赤を際だたせる。
「それはいいな」
「でも、結構甘いんで気をつけてください」
 グランドコンボイにチューブを渡しながらスカイファイヤーはそう言った。
 コンデンスミルクをかけたのはほとんど全員で、全体にまんべんなくかけたのがスカイファイヤー、ロードバスター、ホットショット。半分だけにしたのがグランドコンボイ、ウイングセイバー、ロディマスコンボイ、ランドマイン。少し多めにレッドアラート。
 インフェルノの番になり、チューブの中身がなくなってしまった。
「副司令…」
 空のチューブを持ち上げて、ないことを伝えると「あーホレ」と2個渡される。
「そんなにはいらぬのでは?」
「1本でいいよね?」
 ランドマイン、レッドアラートが口にするがインフェルノは頭を横に振り、イチゴが見えなくなるまでミルクをかけた。
 1本まるごとなくなってそうなほど、へたれたチューブから少し人差し指にとり舐めてから、自らのコーヒーカップに注ぐ。
 完璧になくなった。
「待たせた」
 2本目をスペリオンに渡し、カップを混ぜて一口飲みそのスプーンでイチゴをすくって食べ始める。
 グランドコンボイ、スカイファイヤー、ホットショット、ロディマスコンボイは素知らぬ顔でそれぞれのイチゴを食べ、その他のメンバーは黙々と甘すぎるだろうコンデンスミルクに埋もれたインフェルノのイチゴを見ていた。
 スペリオンはなぜか頬を染め、チューブを受け取ったままの姿勢だ。
「副司令、フォーク取って来てください」
「なんで俺が!?」
「罰です」
 そうだそうだーとレッドアラートも便乗し、グランドコンボイから無言の視線を受けて渋々スカイファイヤーは退室した。


 その後はなんやかんやと談笑し、大量のイチゴはおやつやジャムに代わり、大量のコンデンスミルクをかけて胸やけしそうになっているスペリオンが見られるようになったとか。

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