一言。
「グランドコンボイ。キッカーから言伝がある」
オメガスプリームに人間の戦士は己の気持ちを伝えた。
そして左脚をやられてしまった自分を助けてくれた。
伝言を聞き終え、グランドコンボイは彼に会いたくなってしまった。
いつしか彼を本当の息子のように思っていた。
意識して、ではなく自然に…それが。
<もう一人の親父なんだっ>
彼に、認められた。
久々のスーパーモード。これは彼があきらめるなという励まし。
頑張ってくれという応援。
恐怖を乗りこえろという、
「キッカー、勇気を貰ったぞ!!」
人間の息子よ、ありがとう。
地球、オーシャンシティ。
バイクにまたがり、キッカーは外出する。
「やれやれ。トランスフォームッ」
今の時間、外出許可は出ていない。
止めに、スポーツカーへ変形するホットショット。
ブオオオッ、ブロロ…
少年を追いかける灰色の車。ふいに少年を乗せたバイクが止まる。
目の前には一台のトラック。
ホットショットはロボットモードへ変形した。
「メシ食いに行くんだ。それぐらい、良いだろ?」
ため息交じりにキッカーはトラックに問いかけた。
「…仕方ないな。今度からは時間を守ってもらうからな」
「わーったよ。サンキュー!」
グッと親指だけを立てた右手をトラックに向けて再び走り出す。
がしゃ、と近付いてホットショットは右腰に手をあてる。
「甘いですね」
苦笑してトラック話しかけた。
「彼に。いくらなんでも、ルールは守ってもらわないと」
「そのルールを破った事のあるキミに言われても、説得力がないぞ?」
くすくすと笑うトラック―グランドコンボイ。
「うっ…で、でもっそれなりには・・やはり…」
しどろもどろになりながら、ホットショットは“躾”するべきだと訴える。
「彼を行かせたくないのは私も同じだ。だが、彼はもう立派な大人なんだ」
「言ってることと、矛盾してるんですが…」
今までホットショットと向かい合わせになっていたグランドコンボイは、トレーラーを彼の方に向けていた。
トラックの、後ろ側を。
「っ! わ、私はこれからパトロールに行く。後は頼んだぞ、ホットショット!」
半ば逃げるようにビークルモードのグランドコンボイは走り出した。
仕方ないな、と自信もビークルモードへトランスフォームして灰色の車は反対方向に走って行った。
パトロールというのは、嘘。
バイクで走って行ったキッカーを追いかけたのだ。
流石に帰る所だったようで、彼はヘルメットを被っている。
またがって、ハンドルを手前に何回か引いて地を蹴って、走り始めた。
(獅子の子落し…ではないが、まあ彼はもう子供ではないだろう)
気付かれないように、後をついて行く。
(オメガスプリームに話した時の彼の顔、さぞ可愛かっただろうな…)
前方、注意の看板――。
キキィッ!
「―危ない、危ない」
少し、上の空だったな。そう思ってグランドコンボイは再びエンジンをかけた。
午後、ロボットモードのグランドコンボイはキッカーを捕まえた。
「キッカー、オメガスプリームから聞いたんだが…」
「あ?」
「君は私を父親だと言ってくれたらしいな」
途端キッカーの頬が赤みを帯びる。
<コンボイを・・親父を頼む!>
少年ははずかしさでそっぽを向く。
「っだ、だから? 何だよっ?」
フと微笑み、「いや? それだけだが?」と言えば彼はケッと背中を見せた。
(私もキミを可愛い息子だと思っているよ)
遠くから見ていたホットショットとスカイファイヤー。
「ホットショット、肩見えちまうぞ?」
「あっ・・。副司令、どうです?」
「ありゃ完璧だろ」
「ですよね…」
物かげに隠れていた二人がため息交じりに、誰に言うでもなくこう言った。
『親バカ。――はぁ』