コントロールルームに戻ったグランドコンボイは、スカイファイヤーからの報告に驚かされた。
「1人、チームコンボイに入りたいと言ってきてるんですが…インフェルノの重傷を知らせてきたヤツみたいなんですよ」
「理由は?」
「「記憶をなくしたと聞いた。見つけた責任もかねてサポートしたい』と。…どうします?」
「…一度会おう。当時の状況を詳しく知りたい。……現状はどうだ?」
 グランドコンボイは机に両肘をつき、両手の指を絡めて続きを促す。
「は。場所はその1人に聞いて捜索していますが、記憶回路(メモリーブロック)は見つかりません。傷を受けていたところを見ると、何者にか襲われ、奪われてしまったとの予測もされます」
「……」
「デストロン、の仕業でしょうか?」
 数秒おいてから、スカイファイヤーは口にした。
「…断定はできないな。なにせ、あいつは…」
 司令室のモニター越しに太陽を見るグランドコンボイ。
「仮にそうだとしても彼にあれだけのダメージを与えたのだ。油断はできない。引き続き、捜索を続けるようウイングセイバーに頼む」
「了解」
 スカイファイヤーは額に手を当てた。


 翌日地球時間午後1時すぎ、司令室にはグランドコンボイと1人の青年が向かい合って座っていた。
 黄色い髪にオールドグリーンのジャケットを着た青年。
「まずは名前を聞こうか」
「…ラディバック」
「スカイファイヤー達に話したことをもう一度、私に話してくれるか?」
 ラディバックと名乗った青年は頷き、口を開いた。
「ビークルモードで散歩していたときに、M63D59ポイント辺りから爆発音…それほど大きくも無いから、銃の撃ち合う音が聞こえたんで向かったんスよ。そしたらボロボロのアノ人が倒れてたわけ」
「それでメディカルセンターに通報した、と」
「オレが到着した時にはアノ人以外…黒い、犬っていうか狼っぽい、そんなカンジの奴がいるような気がしましたけどね。確実に見れた自信はありませんし」
「…ありがとう。次に、サポートしたいとは?」
 軽くうなずき、グランドコンボイは本題へと入る。青年は臆することなく、
「アノ人、記憶がないんスよね。所々で判らない部分が出てきて、あなた達がどうしても手を離せないとき、オレが助ける。つまりサポーターですよ」
 といいのけた。ラディバックの瞳に、嘘は感じられない。
 グランドコンボイはしばらく考えたが、一応検討しておくと言い、今日のところは帰ってもらった。
 バタンとドアが閉まる。
「ビーストモードを持つ、トランスフォーマーか…」


 陽が沈めば月が出る。
 月光を浴びながら黒いそれは雄叫びを発した。

 

―我はここに―

back