「同じショック、場面を与えたり見れば思い出す例もある。あとは…自然に戻るのを、待つしか…」
 だんだんとキッカーの声が弱くなる。
「人間なら、だな」
 濃い紅い髪の男が言った。
「あいつは俺達の事を記録しているメモリーを抜き取られたんだ。そのメモリーを取り戻さない限り、あいつには俺達が赤の他人としか思われない。脳とかいう1つだけの部品で創造されている人間とは違うんだからな」
 後半は申し訳なさげに言ったが。
「今日は帰ろう。術後は安静にさせておかなくてはな。ただでさえ、彼には我々の記憶がないのだから」
 上着を翻して水色の髪は待合室を出て行った。
「…一番つらい思いをしてるのは、司令官だよなぁ」
「ああ。…まさかこんな事になるとは思いもしないしな」
 黄土色にオレンジが混じった髪の、カウボーイ風の男の呟きにキッカーは答えた。

 その頃、個室として用意された病室のベッドで目を覚ますトランスフォーマーが。
 ゆっくりと設置された窓に近づき見下ろすと、チームコンボイのメンバーが歩いている姿が映った。
「……?」
 メモリーを探ってもソレがない。今は寝ていろと各部品が訴えている。
 彼は再びベッドへ戻り、目を閉じた。

 

―私は、誰だ? ―

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