夜のジャングルプラネットに2台の車が現れた。
長距離トラックと消防車という不思議な組み合わせ。それもそう、この2台は超ロボット生命体トランスフォーマーなのだから。
カチャ、カシャ。
暗く群青色の空に濃い青の雲が浮かび風に流されるさまを見る、イエローアイとオレンジアイ。
ビークルから変形したグランドコンボイとインフェルノだ。
ザアァァ…
風がジャングルの木々を揺らす。ひとつの遺跡は守り神の様に堂々とそこにありつづける。
ほんのり照らされる風景に見とれていると、背中からギュッと抱き締められる。
やや強い風はなおも葉を吹き飛ばそうとする。
「あなたらしくもない。どうされたんですか?」
振り払おうともせず、インフェルノはグランドコンボイにたずねた。
「久しぶりに2人きりなんだ。それに風に飛ばされては困るしな」
「全く…」
五年の月日は長いようで短い時間だ。しかし、付き合い始め続けている時間は長いものだろう。
地球人にしてみれば2年が長いとほぼ言われ、3年目で結婚するカップルも少なくないらしい。
真面目な性格で冗談などあまり言わないのに、こういう時は平気で言う。
ザザアァァ…
葉が散り、舞う。刃となって2人を攻撃する。しかし、彼らにとってそれは凶器ではない。
「インフェルノ」
一オクターブ低い声で囁くと、抱き締めていた腕を放す。
呼ばれた本人は振り返り、向かい合わせになる。グランドコンボイの胸にインフェルノは引き寄せられ、埋める形でまた抱き締められた。ゆっくりと両腕を相手の背中に回す。
紺色に灰色が混じった雲の流れは速くなっていたが、2人の時は止まっていた。
しばらくして、インフェルノは顔を上げ、グランドコンボイは下を見て、2人の視線がぶつかるとアイを消して距離を縮めていく。
たったひとつの光で出来た2つの影が1つになった――。
小さな音で目が醒めた。
昨夜流しっぱなしのまま、寝てしまったらしい。
機械からは歌が流れ続け、止めようと思ったがやめる。
夢の余韻を味わいたかったのだ。この曲があの場所を時を与えてくれたのかもしれなかったから。
小さな瞬きなき天でも
探せば見つかる安らぎを
愛する君に与えよう
かぐや姫で終わらぬように
紺碧の闇に浮く 太陽は
二人を結ぶ 自然のこして
やわらかな輝きに照らされ
流れゆく雲は風のままに
ふと懐かしさよみがえる此処に
置いていく 場所へ
小さな瞬きなき天でも
探せば見つかる安らぎを
愛しい君に捧げよう
かぐや姫で終わらぬように
準備を整え、部屋を出てキーをする。
夢が正夢にいつかなる事を望みつつ、仕事場へ向かった。