部屋に戻って来たホットショットから、カプチーノを受け取る。
「悪い」
「まだ足りなかったら、持ってきてるから遠慮するなよ」
彼は、私の隣に座った。
「司令官に限って、気持ちが変わることないんじゃないか?」
数秒間、沈黙が続いたが、ホットショットが口を開いた。
「お前が傍に居るだけで安心なんだよ。きっと。落ち着くから普段気にならないことが気になるんじゃないのか?」
「そうは思えん」
私はカプチーノを一口飲んで、話し続ける。
「私がいるから落ち着くなら、時計や番組など気にしないはずだ。時間が分かっているのだから録画すればいい。生で 見たいならそう言えばいいんだ。ただただ時間を気にしているだけなんてっ…!」
そう言って熱いカプチーノを一気に煽る。つ・・・舌が火傷したかもしれん。ひりひりする。
「分からない…」
司令官の気持ちが分からない。どうして私といるのに。ホットショットの言うとおり、安心するからなのか? だがあの落ち着きのなさはデストロンが反乱したときの場合と似ている。たかが番組1本に。いや、あれは私も見ているが。
――本当に、私のことが好きなのだろうか。
「…聞いてみたらどうだ?」
「何を?」
砂糖を食べつつ、私は尋ねた。
「好きかどうか。まぁ答えは分かってるけどな」
「……」
「聞くのが怖いのは分かる。けどな、じゃあ何で2人で休日を過ごしてるんだ? 好きじゃなかったらそんなことはしないだろ?」
確かにそうだ。だが、気づいたらいつも2人でいた。
「なんだったら俺が聞いてもいいし」
「……」
私は無言で砂糖を口にし、食べ続けた。自分で確認した方がいいような気がする。相談に乗ってもらい、少しだけ気分が楽になった。
「…いや。今度俺が直接聞く。悪かったな、ホットショット」
「構わねぇよ」
笑って答えるホットショットに、口の端を吊り上げて応える。いい親友をもったものだ。
後日、ホットショットに報告した。やはり彼の言うとおり私が傍にいるからこそ、落ち着き逆に落ち着かなかったのだ。
テレビはそれ以降、放送時間になると2人で見るようになった。