「インフェルノ殿〜・・・」
 作業中だろうと助けを求めずにはいられなかった。
 金網の上に乗せたところで、インフェルノは振り返り
「レッドアラートに訊いてみたらどうだ? よくロディマス殿といるだろう」
 と答えた。
「一緒だとバレるだろ・・・」
「ランドマインに聞け」
 司令官の名前を出さないところが、らしいといえばらしい。バレてはならないとの配慮にホットショットはトボトボと外に出て行く。

 Happy? Sent?
 何が嬉し楽しい? 聖なる日?
 忘れてはならない 2度と繰り返さないために。

 ラッピングをして意気込むロードバスター。
 気恥ずかしそうにするホットショット。
 無表情なインフェルノ。
 それぞれのお菓子作りが完成した。
「あ、ミーシャ。サリー。これ、俺らからの礼な」
 小さな一つまみの袋をひとつずつ女子2人に渡すホットショット。
 トランスフォーマーにしては小さくても、人間には両手一杯のものだったが。
「わぁっ、ありがとーホットショット!」
「ロードバスターとインフェルノもね。ありがとう」
 ひとつ頷くと3体は「渡しに行く」とキッチンルームを出る。

 パッセージで分かれ、インフェルノはコントロールルームに向かった。
 予想通りそこには恋人の姿がある。
「グランドコンボイ司令官」
 呼びかけると振り返り近づいてくる。
「どうぞ」
 やや俯き、頬を染めてインフェルノは抱えていたものを差し出す。
 それを受け取り、グランドコンボイはアイを細めた。
「ありがとう」
 さっそくいいか? と問えばこくりと頷かれ、司令机(コマンダーデスク)まで導く。

 せめて天空(そら)では楽しもう。
 愛しい人が傍にいるなら。
 つらいことを乗り越えるために。

 ラッピングを開けるとトリュフが入っていた。かなりの完成度でおいしそうだ。
 マスクを外し、グランドコンボイは一口食べると微笑んだ。口内に広がるアールグレイの香り。
「上手い」
 その顔に、インフェルノは頬を染めて俯く。
「今日はバレンタインデーだったか。ありがとう、インフェルノ」
 なにか言おうとしていたが、声にならず、インフェルノはしばらく口をパクパクとさせていた。
 珍しい光景にグランドコンボイはぷっとふきだす。
「し、しれいかん!」
「フフ・・・すまない」
 知りません、とインフェルノは司令室を出て行く。
 彼の姿が見えなくなると、グランドコンボイは通信回路を開いた。
「変わらぬ過去を気にするのもいいが、変わる未来を気にしたらどうだ?」
 ひとつは同じ名の元へ。
「そろそろお茶にするか」
 ひとつは恋人へメッセージを送るのだった。

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