終業時刻をとうに過ぎた頃、グランドコンボイは首を鳴らして部屋を出た。
 キッチンルームに着くと湯を沸かし、背の高い白いコップに茶色い粉末を入れ、牛乳(ミルク)を注いで沸騰した湯を入れる。
 スプーンでかき混ぜ、盆(トレー)にコップと砂糖入れ、新しくスプーンを添えてルームを出る。
 向かう先は、インフェルノの部屋。
 通信で訪ねに来たことを伝えれば、すぐにドアが開いた。
 部屋に通され、来客用の机に先ほどのコップ類を置き、盆を端に寄せた。
 甘い香りがインフェルノの鼻をくすぐる。
「司令官…?」
「君は甘いのが好みだったからな。飲むといい」
 ゆるやかな曲線を描きながら湯気が立ち上る。
「…いただきます」
 ごくりと飲み込み、インフェルノはやや驚いた顔でグランドコンボイを見た。
 どうした、と首を傾げればフッと微笑み2口目を飲む。


 中身が半分以下になる頃、先に口を開いたのはインフェルノだった。
「ありがとうございます、コンボイ司令官」
 ふわりと笑う。ぎこちなさは多少残っていたが。
「ん?」
「心配おかけしました。もう、大丈夫です」
 そう言ってコップをすする防衛参謀。持ってきたときより減っている砂糖を見て、グランドコンボイは頷き
「ならいいんだ」
 と言った。

 昼に安心したものの、やはり気になった。あの後、どうしても彼を危険な目に合わせなければならない決断を下したのだから。
 総司令官としても恋人としても、悔やまないわけがない。

 数日間、昼休憩を取っているグランドコンボイにはコーヒーが差し出され、インフェルノは牛乳と砂糖たっぷりのココアを飲む姿が目撃された。それはもう2人とも幸せそうに。

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