バランスを崩し、グランドコンボイの胸へとインフェルノは倒れこむ。
「しっ、司令官??!」
「…………」
倒れこませた彼を抱きしめながら、グランドコンボイは安堵していた。
抵抗すればいいのにしないのは、彼が自分に対してこうすることを許しているからだ。
「し、司令官、仕事中です…」
「今は休憩中だろう?」
「変わりませんっ」
顔は見えないがきっと赤くしていることだろう。こう言えばああ言うでしばらくこのままでいたいと、総司令官は思った。
「安心した…」
呟きはしっかりと聞き取られてしまったのか、インフェルノは顔を上げた。
「コンボイ司令官…もしかして、…嫉妬されてたんですか…?」
その答えにグランドコンボイは顔を引きつらせ、頷いた。
「やはり、見抜かれてしまったか…」
「いえ…嬉しいです」
赤く染めた顔を呟きながら埋める彼を優しく抱きしめる。
温もりを感じつつも何かが足りない、と感じて彼を上に向かせる。突如あごを掴まれ、瞳と瞳がぶつかるように合わせられるとインフェルノはまた、頬を染めた。お構いなしに段々近づいてくるグランドコンボイの顔に、その先の行動を読み取って瞼を閉じる。
互いの鼻がこすれあい、唇が重なる。
ほんの数秒でも好みのコーヒーの味がまざり、深みのある味を堪能した。
お互い顔を見合わせて微笑む。
グランドコンボイは名前を呼ぼうと口を開いたが、ドアが開いて声にはならなかった。
インフェルノは慌てて彼から離れて、横に立つ。
戻ってきたのはスカイファイヤーとウイングセイバーの2人。
危なかった、とインフェルノは心の中で思い胸を撫で下ろす。だが、グランドコンボイは流石というべきか慣れているとでも疑うべき様子で、戻って来た2人に 礼を言い、もう上がって良いと命令を下す。
ウイングセイバーがインフェルノの事を尋ねれば、コーヒーを淹れてきてくれるように頼んだ、とだけ答えた。
スカイファイヤーの方は疑っていたが、机上にあるカップに嘘ではないと分かると、減給されては困ると考えたのかいつもの冗談も言わず、素直に従った。
二人が退室するとグランドコンボイはインフェルノの名を呼び、こう言った。
「この書類を届けたら、君の部屋に行ってもいいか?」
答えにインフェルノは頬を軽く染めて小さく頷いた。