砂漠唯一とも云える、水のある場所。生物は数少ない資源を求め、自然と集まる。
動物も、人も。それは変わらない。
陽が落ちていき、2人は目を細めた。朝日もそうだが、夕日も眩しいことには変わりない。
「もういいだろ、戻ろうぜぇー」
「…ん。そうだな、腹も減ったし!」
相変わらずだ、と苦笑し先を歩くロイドに着いて行く。
この旅に終わりは見えない。けれども、彼とならば、いや彼だからこそ着いて行こうと決めたのだ。
陽は沈み終わりを迎える。それは最期ではなく再来の為、休息を取るためにすぎない。
晩飯を摂り、2人はゼロスの貰った戦利品を整理しつつ、互いの情報を交換する。
「前にネビリム拾っただろ? あの辺にまた怪物がでるらしいんだってさ」
「ああ、それなら聞いたぜ。夜にうなり声やら遠吠えが聞こえてくるってよ」
「関係ないかもしれないけどさ、一応行ってみようかなって思ってるんだけど」
少しでも怪しければ、それは繋がりになるだろう。
「そうだな。まあ、いたいけなハニー達が襲われでもしたら大変だしな〜」
「…お前、そればっかだな。ほんと」
「でっひゃっひゃ」
ため息をつき、ロイドは上着を脱ぎ備品のハンガーへとかける。ぱらぱらと少量の砂が落ちていった。
がばり、とその背中にゼロスが抱きつく。
「お前な…」
「怒んなよ〜ハニ〜」
「呆れてんだよ。あーもう、また砂だらけじゃんか」
外に出れば風はなくとも、歩くだけで多少の砂は付着するものだ。いくら街中とはいえ、叩き落としておかなければ気持ち悪い。
力を抜かしきり、体重を預けるゼロスを無理やり引き剥がし、ロイドははっきりと言った。
「お前、またぐるぐる考えてたんだろ。ほら、さっさと風呂入って寝るぞ!」
「…ロイドくんってば、相変わらず鋭いんだから」
何も尋ねてこないところが『らしい』。それでいて、さりげない気遣いもさらりとこなす。少年のその言動に何度助けられたのか、救われたのか。
「明日さくっと行って、さくっと倒しますか」
「どうせ女の子に褒められたいだけだろ」
「…んー、それもあるけどぉ…」
一呼吸置き、ゼロスは口にした。
「ロイド。お前がいるから」
どうしてなのか、そう考えることもあった。だが、『彼』だからこそと答えは単純なものなのだ。最初こそはふざけていた事も、今は『彼』だけには本気で。
「っ…俺も、お前がいればいいや」
一瞬、言葉につまったかと思えばロイドはそう言い放ち、部屋を出て行った。残されたゼロスは瞬きを繰り返し、慌てて彼の後を追う。
果てしない最後(おわり)の見えないこの旅も、互いを思う限り諦めることはないのだろう。