「だぁー、重い! 離れろ!」
「ええ〜ハニーつれな〜い」
久々、ってわけでもないけれど地下廊下に行くとロイドくんの背に抱きついたゼロスくんが振り払われていた。
なんだろうな、2人を見ると安心するのって。
「お、ローズ。おまえも大変だよなぁ、こいつの遊びに付き合わされて」
「遊びって…俺さまはいつだってまじめよ〜?」
「アホなことしてるって聞いてるぞ?」
ひどい〜と泣きまねをするゼロスに、仁王立ちのロイド。日常って感じがするなぁやっぱり。
ここに帰ってきてよかったって思う。ただ…
「ハニーがかまってくれないならローズちゃん〜♪ デートしよ〜♪」
「このアホ神子!」
「あたーっ!?」
わたしに向かって駆け出そうとしたゼロスくんを、ロイドくんは右腰に差した鞘と、右足を出してこけさせた。
「楽しそうだね、ゼロイ」
そう思ったままを言ったら「まとめるな!」って顔を真っ赤にしたロイドくんに言われてしまった。かわいいな。
***
夜風にあたりたくて、夜中、甲板に出た。
風が服をはためかせる。その音さえも愛おしいと感じるのは世界が迎えてくれているからなのかな。
コツン、と靴音がしてそっちを見れば赤く長い髪がふわふわ揺れていた。
「星の下にたたずむハニーも、きれいだねぇ」
ちょっとでもカッコイイと思ったのは、内緒。
ゼロスくんはわたしの隣に、船のふちに背を預けて空を見上げながら口にした。
「ハニーはどこまで知ってるのかな?」
人間観察に優れて、飄々(ひょうひょう)としているのもそういった事情からで、それでも根はとてもいいのだと知っているけれど。
「何が?」
視線はあわせないまま、わたしは尋ねた。
「…あの天使さまとよく会ってるって聞いたぜぇ? 何もなく、はねーんじゃねぇの?」
「わたしはディセンダー。それだけじゃ、答えにならない?」
そう、クラトスは介添人。それ以外に理由はあるけれど、他の人――『新しい記憶』の事を知らない人にはそれだけで十分なはず。
「ふぅん…」
それきり、ゼロスは黙ってしまった。そっと心の中で息を吐く。
さといのも困りものだな。
***
恋愛かぁ。パニパニもすごく気持ちよさそうだったし、してみたいって思うのかな。
わたしはそういう気持ち、あったといえばあったかなぁ。ただ、あこがれだって気づいたけど。
…ここにいない人たちはどう思ってるのかな。
さくっと終わらせて、帰れば姉御とロイドくんが待っていた。
もう誰もつっこまないよね、ロイドくんのことゼロスくんが「ハニー」呼びするの。それにしてもカッコイイなぁ、ロイドくん…。
報告が終わればあとはくつろぐだけ。どこかでレベル上げしようかな。
甲板で何か話してるなぁとは思っていたけれど。まさかいなくなるなんて…それでもきっちりステージを用意するのは、もうお決まり的なものなのかな。
キールにスパーダ、リッドにガイにティアと…なんでクラトス??
一応のことがすんで、わたしは洞獄門に向かうことになった。そこまで分かっててなんで誰も来ないんだろう?
ショップで準備したわたしは甲板にでると、クラトスに呼び止められた。
「私がアレに呼ばれたのは足止めをしたかったのだろう。気をつけて行け」
そういえば言ってたかな。「ドンデン返しが待ってる」って。もしかしなくてもこれのことなのかな。
こくりと頷いてわたしは2人が待つ場所へと向かった。
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To be Episode.16