主役の座がどーのこーのというゼロスくんとジェイドを一掃して、船に戻る。
なんだかどっと疲れちゃった。
締め、と言う形で2人の会話が終了するとゼロスくんが報告しに行こうとしたわたしを止めた。ちなみにジェイドは一足先に戻っていった。
「何?」
「俺がなんでGVしようと思ったか分かるか?」
単なる暇つぶし…には聞いちゃいけない言葉が出てたけれど…分からない。
首を傾げるわたしにそっと傍によって
「お前がなんらかの形で俺らやギルドの奴らのことを知ったからさ」
と耳元で言った。
それは…『新しい記憶』のこと?
「どういう…こと?」
「気になってたんだよなぁ、なぁーんで俺さまが天使化してるのか、ロイドの父親がクラトスなのを知ってたのか、クラトスが天使様だってのを知ってたのか」
「あ…」
しまった、クラパパのことゼロスくんが「天使さま」って言ってたのに普通に答えちゃった…。
そっか、注意散漫だった。気づかせないようにしてたのに…。
「図星、か」
黙ったままのわたしにゼロスくんはにやりと笑った。そしてチャットの所まで着いてきて、
廊下へと出た。
とりあえず、と報告するわたし。
「どーよGVは。またやろうぜぇ」
ゼロスくんに話しかければそう言うし。動揺を隠しつつ
「そうね、2対1でなければ、考えるわ」
と答えた。
「あらら」
肩を落とす彼に悟られないよう、早々にきびすを返してわたしは部屋へと帰った。もう他のクエストを受ける気にもなれないし。
……どうしよう…。
***
展望室に行くと外はもう暗く星が瞬いていた。
かたんと音がして振り返るとクラトスがいた。彼はカウンター席に座るとグラスにボトルを注ぐ。
わたしは隣に座り、ノンアルコールの入ったボトルを手にした。
「気をつけろ、と私は言った筈だが」
「…注意を受ける前にバレちゃって」
そう、彼にバレたのは隣の彼に忠告を受ける前。見事な話術にひっかかったから。いや、わたしが間抜けだったのかな。
「で、どうするのだ? 神子に話すのか?」
「その前に教えて。クラトスは――以前話した『世界』のクラトス?」
答えは分かってる。このクラトスは『グラニデ』のであり、『2つの世界』の人。
「今更隠してても仕方ない。そう、なるな」
「そっか」
それからは2人で飲みながらとうとうと話した。
『グラニデ』にいるアドリビトムのみんなは元の世界の記憶をなくしていただけで、それを取り戻すきっかけを与えたのは『新しい記憶』を持ったわたしが口にした“言葉”たち。
このクラパパはわたしが言った『シルヴァラント』『テセアラ』で思い出したらしい。気づかないふりをしていた、と。
(ゼロイの場合、口にしてなくても気づいてたのかも…)
彼だけは、例外かもしれない。