新しい記憶を持った衝撃で、アドリビトムのメンバーの呼び方を忘れてしまった。記憶のおかげで顔と名前は一致するんだけど。
「そんなに代わり映えはしなかったかな。ほとんど呼び捨てだったし」
「そうだね。あだ名で呼んでる人もいたけど、ここってさ人数多いから」
 くすくすと笑いながらコレットとファラが言った。
「みんなびっくりしてたよね」
「そうそう。また記憶喪失って。ほんとは違うんだよね?」
 1秒だけ黙ったけれど、すぐにこくりと頷いた。
 みんなを忘れた訳じゃない、“名前の呼び方”を忘れただけ。それに、逆を言うなら記憶を無くしたんじゃなくて“増えた”。
 でもそれは話すことはできない。だから、覚えてて良かったって答えた。
「ご、ごめんねローズ…」
「ん? なんでコレットが謝るの?」
 苦笑してファラがあとを継いだ。
「ローズ、クエストの事覚えてる?」
「うん」
 わたしが『新しい記憶』を持つことになったクエスト。確かあの時はモンスター退治で…クラトスとチャットと…あ。
「謝る必要ないよ、むしろごめんね?」
「ううん、ローズは悪くないよ」
 そうだ。あの時、コレットのピコピコハンマーに当たったんだった。うかつだったなー、こういうときは気絶しやすいんだよねぇ…あ、防御が低いんだったかな? まあいいや。
「2人とも無事だったんだからいいんじゃない? ね?」
 こういう時はファラの明るさに救われるなぁ。さってと、他の人たちになんて呼んでたか聞きに行かなきゃ。
「それじゃ、わたし他のみんなの所に行くね」
「あ、うん」
「またね、ローズ」
 バイバイと手を振って2人と別れた。
 うーん…コレットのピコピコハンマーということは、これは良い前兆なのかな? 
 彼女のドジは絶対良い方向に行くし…これも『新しい記憶』が教えてくれた事。
 さてさて、どこから尋ねようかな。

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