「美しぃ〜♪」
エクスフィギュアは消え去り、カラカラと鉱石が落ちてきた。
近づいて手をかざし、浄化する。
鉱石を手にしたところで、地鳴りがした。
「おわっ、地震か?」
「やべぇな…崩れるんじゃね? ここ」
2人とも呑気(のんき)だなぁ〜。
「わわっ、はやく脱出しないと!」
「ゼロイ、頼むよ!」
「だからまとめて呼ぶな!」
「ハニー、それ認めちゃってるから。でも、こりゃ早くしねぇとな」
出口に向かって走り出したはいいけれど、途中で壁が崩れて天井がなかった。空が見えるだけマシ、だったのかなぁ。
しまっていたはずの羽を広げ、ゼロスくんはカノちゃんを抱え上げ浮かぶ。
「ローズ、捕まってろよ!」
そう言うなり、ロイドくんはわたしの腰に手を回して翼を広げた。
***
バンエルティア号は最初よりも少しはなれたところに停泊していた。
甲板に立つとほとんどのみんなが出ていた。
「あー…」
「やっぱ目立つよなぁ」
空色の翼をはためかせながらロイドくんは思案顔。わたしも思わず声がでちゃったし。
どうするわけにもいかず、わたしたちは甲板に降り立った。というよりも、わたしとカノちゃんは抱えられていただけだけどね。
「リッドが言っていた『真夜中の夕日』ってこれだったんだ」
「コレットと同じ羽、ゼロスも持ってたんだね。わあ、凄いや!」
ファラとカイルがそれぞれ反応を示す。他のみんなも同じように…あーハロルドだけ好奇の目だ。
わたしはロイドくんが持っていた鉱石にも手をかざして浄化して、彼と一緒にリフィに渡した。エクスフィギュアだった方は浄化したとたんに壊れたから大丈夫、のはず。
「『真夜中の夕日』…確かにこの光は夜でも目立つでしょうね」
「コレットともクラトスとも似ているけれど、形状は違うわね。ロイドに至っては鳥そのものだわ。これもそのエクスフィアってやつが関係してるのかしら〜♪」
顔色ひとつ変えないジェイドに、ますます好奇心旺盛な顔になるハロルド。この人たち楽しんでるよね、絶対。
「ロイド…」
「う、そんな顔するなよ。仕方ないだろ、ローズだけ置いていくわけにもいかないんだし」
「うん、ありがとロイド。それにクラトス、人の事言えないよ? 羽、しまわないと」
翼をしまったロイドくんにつめよるクラトス。父親としての心配と、翼を出したことへの怒りが混じってるんだろうな。でも、そう咎(とが)める本人も羽を出してちゃ迫力がない。
「ぅぐ」
息子ともなると無表情も崩れるなぁ。
「さあさあ、4人とも帰ってきたことですし、ご飯にしましょ。今日はあなたたちの好きなもの、用意してますからね」
パタパタと羽を動かしながらパニパニが言った。
「やりぃ! もう腹ペコなんだよなぁ〜」
「ほんと? 安心したら私もお腹すいてきちゃった」
ロイドくんとカノちゃんの声に、みんなが賛同していっぱいだった甲板はほぼ空になった。
残されたのはわたしと、ゼロスくんと、パニパニだけ。
音もなく、ゼロスくんの羽は消えていた。
「私、他の国とか村とかはよく分かりませんけれど…どんな姿でも、その人はその人と思います」
「マダムもヒトがうまいねぇ」
「いえ、だってみなさん。本当、いいヒトばかりですもの。さ、お入りになって。せっかくのご飯が冷めてしまいます」
ちらりと伺(うかが)えばちょっと驚いていた。でもすぐ元に戻って「仰せのままに」と言ってる。元、でもないかな。凄く…安心しきってる。
あ、そういえば。
「言ってなかった。ただいま、パニール」