カラン、と落ちた剣を拾う。
闘技場ではなぜか、ギルドメンバーの武器を手に入れられる。
「アイタタ…やっぱ強いなぁ、ローズは」
「術の詠唱はもうちょっと早くするべきかもね」
上半身を起こしたスカタンに言えば、ははっと笑う。そして剣を見て苦笑する。
「スカタン?」
「…ここは、『グラニデ』なんだなぁと思ってさ」
「……」
『新しい記憶』で分かったこと。拾った剣を見てわたしはスカタンが言いたいことがなんとなく、分かった。
この剣は、喋らない。
スカタン、スタンやルーティ達の世界では剣が喋る。以前、ハロルドが楽しそうに話していた「人格を無機物に転写すること」。
それが、彼らの世界では実現している。
通称、ソーディアンチームと呼ばれる彼らは英雄で人間。その英雄の人格を転写したのが彼らの剣。声はマスターとなった者にしか聞こえない。
――リオンがいるのは、そこまで行っていないからなのか。それとも『グラニデ』に来た瞬間(タイミング)が“それ”に重なったからなのか。『新しい記憶』が見せた彼らの“運命”…。
考えても拉致があかないや。
スカタンを倒したことで手にした片手剣。柄の所に赤く光る宝石が埋め込まれている。これが、転写された「コア」。もっとも、『グラニデ』では単なる飾りでしかないのだけれど。
海底遺跡でわたしはスカタンとフィリアを連れて、ルチルクォーツに光を灯した。
「やっぱ何度見ても綺麗だよな」
「ええ、本当に…。こうしてルチルブライトができるのですね」
モンスターも出ないから、2人に有り余るクォーツを渡して、わたしは片手剣を取り出した。
闘技場で手に入れた、本来喋るはずの、喋らない剣を。
(すでに加工済みっていうのも不思議だけどね)
その中でもレイピアに似た形状の剣、シャルティエはすでに青色だったりするのだけれど。
ディムロスとクレメンテのマスター達に気づかれないよう、わたしは称号を変更して鍛冶をする。アトワイトとイクティノスも並べれば、そのデザインにちょっと驚いた。
ひとつとして、同じ形状がない。
(ハロルド凄いな〜)
カイルとリアラは元の世界にまだ戻れないけれど、時間をこえることには成功しているから、帰れるんだろうな。それを考えると、やっぱりハロルドって凄いんだって思った。
スカタン達の『世界』でも『グラニデ』でも、それは変わらない。
「ローズさん、終わりましたよ」
「ん、ありがとう。じゃあ戻ろうか」
「っし、行こう!」
2人と一緒に、一層目まで戻れるワープゾーンに入りバンエルティア号へと帰還する。
どの時点なのかは分からないけれど、少なくとも『グラニデ』にいる限り彼らの歯車は廻らないんだろうな。
…パートナーがいない寂しさっていうのは、なんとなくだけど分かる気がした。