2人を寝かせ、迎えてくれたカノちゃんにすすめられてわたしはホールの椅子に座った。パニパニのいれてくれたココアが疲れた体に凄く心地よかった。
ホールにはクレスくん、ミント、チェスターにアーチェ、それからリフィにハロルド、ジェイド。
「私はクラース・F(エフ)・レスター。精霊について研究している。最近、精霊たちが騒いでいるので、その原因を探っていたんだ」
『新しい記憶』通りなら、この人の体にあるのは精霊と契約するためのペナントだよね。
「聞けば『負』が充満し、世界樹がどう対処すべきか困っているという。そこで私は君たちが言う『ネガティブ・ゲイト』へと向かった」
「なるほど…そこで、ローズ達と出会った、という訳ですか」
「ああ。まさか具現化したセルシウスと、『負』の化身、さらには」
ちらり、とクラースさんがわたしを見た。
「ディセンダーに会うことになるとは、思いもしなかったがな」
「そうね、グランコクマのパーティはしたけれど、一般の人にはローズがディセンダーだなんて誰も知らないもの」
「でも、どうするの? あのゲーデすらふっとばした『負』のかたまり、このままにはしておけないでしょ」
そう、わたしが『負』を『マナ』に変えればいいんだけれど、今の状態じゃそれも難しい。
アンテナを立てて、世界樹の根も精霊界への入り口もつないだ前回よりも。
「クラースさん、僕たちにできることはありませんか?」
「少しでも、お役に立てれば」
「せっかく俺たちもいるんだしな」
「そーそー、魔術が必要ならあたしもいるしぃ〜?」
クレスくん、ミント、チェスターにアーチェが手伝いを申し出る。クラースさんも、クレスくんたちの村の出身だって言っていた。
ナディに攻められたあと、身を隠して精霊の研究を続けていたとも。そこで光りの精霊・ルナと契約したんだって。
「だが、原因までは分からなかった。それが分からないことには…」
「原因なら分かる」
みんなが押し黙ったところで、ふらつきながらもゲーデが姿を見せた。あわてて、彼の体を支える。
「『負』がかたまっている場所がある…そこに行けば、ディセンダー。やつらを…浄化し、ろ…」
「……!」
そこまで言って、ゲーデは気を失ってしまった。運ぶよ、と言ってくれたクレスくんに任せ、わたしは科学者組を見る。
「『負』がかたまっている…ネガティブ・ゲイトとは違うところに原因があるのね…」
「んじゃあ、ま。その場所が判明次第、行かなきゃね」
それまでは休息ということになった。
クラースさんも、セルシウスと接触できたことで研究に力を入れたいとアドリビトムで働くことになり、部下が増えたとチャットが喜んでいた。
凄く楽しい。ここにいるみんなが楽しそうにしていて、いろいろな目的を持っている。
ゲーデも徐々に回復しつつあって、クラトスが『負』のかたまっている場所を聞き出している。
それと同時に、わたしの中で何かがふくれつつあった。暖かくもあり、張り裂けそうになる、何か。
――ニアタあたりに相談すべきかなぁ?