ニアタが行ったのは、世界樹のメッセージを伝えるためなんだろうな。
「世界樹はなんて?」
そう思って、口にしていた。
「…還(かえ)って来い、と言っているようだった」
「…そっか」
なんとなく、気づいてたけどね。
無くなりつつある増えすぎた『負』。世界の危機は去ったんだから、ディセンダーの役目はもうないに等しい…というより、ない、のかな。
「里帰り、ってやつだね」
「…ローズ」
ソフトドリンクを入れたコップに手をやると、クラトスがこっちを見ないまま口を開く。
「還ったとして、またこちらに戻ってこれるとは限らない」
「んむ?」
「戻ってこれたとしても、記憶があるとはかぎらん」
淡々と告げる彼は仕方ないっていうよりも、それが当たり前として受け止めているようだった。
介添人として、なんとも言えない感情が渦巻いているんだろうなぁ。
「そっか」
確かに、今のわたしはないはずの記憶を持ってるんだから、生まれた時と同じようになってしまうのは仕方ないのかも。…あ。
「そうだ。ニアタ、マナの過剰摂取だとどうなるの?」
「それが世界樹のメッセージだ。そなたの中に溜ったマナを吸収する必要がある。今は安定しているようだが…」
「ん、ありがと」
どちらにしても、還らないといけないんだろうな。