「少し、ややこしくなるが」
そうクラトスが前置きして
「私やロイド達は元々この『グラニデ』にいた。だが、なんらかの原因で『別の世界の我々』が『グラニデ』の私達と結合したのだろう」
と言った。
「ん……?」
「噛み砕くと、2つの丸があるとしよう。右手に『グラニデ』、左手に『別の世界』だ」
「うん」
「何かしらの方法で、または原因で左手。つまり『別の世界』の者たちが右手。『グラニデ』へと来てしまった」
首を傾げたわたしに、ニアタがゆっくりと話し出す。頷いて、先を促した。
「同一時空に同じ人物は存在できないのだ。『別の世界』の者達は『グラニデ』の人物に吸収されてしまった。2つの丸は、二重丸へと変わった」
「…それって」
「『新しい記憶』は『別の世界』の我々を返すためでもあるのだろうな」
クラパパの厳かな声がそう締めくくった。
「……そっか……」
波の音が聞こえる。
今更ながらに、海に停泊しているんだと気づかされた。
2人の話をまとめると、ロイドくんの武器を例えるのが一番分かりやすかった。
『グラニデ』がヴォーパルソードで『別世界』がフランヴェルジュ。ヒトは『グラニデ』記憶は『別世界』で、結合されてエターナルソード――『今のグラニデ』となる。
「…なんとなく、分かった。わたしが『新しい記憶』を持ったのは、結合しちゃった『別世界』のみんなを戻すためなんだよね?」
ニアタの光が強く輝く。頷いた、ってところかな。
「ローズ。前にも言ったが、やはりお前は世界樹に還るべきだ。本来ならばお前は記憶を持たない、生まれたての赤ん坊だったのだから」
「…今は、記憶があるよ? わたしはゲーデと一緒に帰ってきた」
「…そうだったな。だが、その前は何も知らなかっただろう。先代の記憶を忘却し生まれたのがお前だ」
そう。マンダージ遺跡でクラパパから言われた。「思い出さないか?」って。来たこともない所でそう言われてもピンと来なかった。…ほんとは、来たんだろうけれど。それはわたしであって、わたしじゃない。
「ないはずの記憶を持つこと。それはある意味危険だ。必要だからこそ、世界樹はお前に『新しい記憶』を授けた。だが、結果は良い方向にも悪い方向にも進んでいる」
「どういうこと?」
「世界樹に還れば、結合した私達を戻すことには成功するが、今のお前はマナの過剰摂取で存在そのものが危うい、ということだ」
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be Episode.37
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