世界はいろいろある。
 ニアタに言わせればここは『グラニデ』。
 ニアタのいたところは『パスカ』。
「新しい記憶」に浮かぶ2つの『世界』。

 深夜の展望室でクラトスと隣合わせに座るわたし。
「それが『シルヴァラント』と『テセアラ』か」
「2つの世界は表裏一体。元々はひとつだったけれど、分かれてしまった。世界樹がある、『グラニデ』ではない世界」
 このクラトスは『グラニデ』のクラトスなのか。それとも『パスカ』なのか。
 外見年齢よりもはるかにいっていることは知っているのだけれど。
 ああ、でもニアタは6000年って言ってたから『パスカ』じゃないのは確かか。
「ロイドとコレットはシルヴァラント、リフィとジニはテセアラ生まれだけどシルヴァラント育ち、ゼロスはテセアラ」
「……」
「『世界を救うために神子は再生の旅にでる』。グラニデの神子もそうなの?」
「はっきりとは示されていないが、世界樹の危機を救うのは神子だと言い伝えられている」
「ディセンダーの光が見えるから?」
「かもしれんな」
 神子であるコレットとゼロスはわたしの光が見える。カノンノも『パスカ』のディセンダー因子を持ってるから見える。精霊にしか見えない“光”。
「もしかして、ディセンダーの中に神子がいたのかな」
「…私が見てきた中ではいなかったな」
 カラン、とコップにはいった氷が動いた。
「『グラニデ』にいるロイドくんたちは『2つの世界』のロイドたちとは違うのか、その記憶がないだけなのか。どうなの?」
「事実を知っていたとしても、それは『グラニデ』の私の記憶となる。『2つの世界』の私の記憶ではないだろう」
「ややこしいこと言っちゃって。ま、その内ボロを出させますよ。『新しい記憶』、ニアタには話すべきじゃない?」
「彼ならば確かに知恵を与えてくれるだろう。だが、興味を持たれるのは少しやっかいだ」
 それは言えてるかも。義理とはいえ娘のカノちゃんに話さずにいないとは限らない。最近、べったりだし。
「コレっちが神子と呼ばれるの苦手としているから、『グラニデ』の神子も複雑事情だね。ゼロスくんもそれっぽいし」
「…ディセンダーが役目を終え、世界樹の中に戻るのと同じ意味を持っている。神子が再生の旅を成功させた場合」
「んむ、羽があるコレっちは“失敗”しているということ?」
「お前がいる時点でそうなるのかもしれんな」
「…はー。まあ負は完全とはいえないけどなくなったし、ゆっくり事を進めますか」
「私とロイドのようにか?」
「さあ?」
 そうだよとは言わずに、解けた氷を飲んだ。

『シルヴァラント』と『テセアラ』。2つの世界を結ぶ楔。
 再生の旅を始めた神子はシを迎え、天使となる。
 シとは感情を失くすこと、時間を止め、永劫を生きるモノ。
 感情を持ち、羽のある彼女は再生を失敗していることになる。
『新しい記憶』が見せた2つの世界の結末。それは2つの未来をも見せた。
「クラパパ、本当に『2つの世界』の記憶を持ってないの?」
「意外としつこいな」
 答えは出ているんだけどね。

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