信じてるただ一言。それだけで勇気くれていた。
『新しい記憶』が流す歌声。とても切なくとても儚いとても優しいもの。
世界は、ひとつじゃない。
「それっ!」
買い込んでいたライフボトルを使って、ロイドくんを蘇生。距離を取りつつ、ミックスグミを投げる。
軽やかにステップを踏んで距離をとるゼロスくん。入れ替わるように2刀を振りかざすロイド。
「甘いねぇ、ほんと」
上空に舞い上がるゼロスくんにかかるも、打ち落とされる…ロイドとわたし。
「ヒールストリーム!」
緑の光を浴びながら突進していくわたし達。
幽霊の正体…それは『別世界のゼロス』。
夕日の色をしたコレっちに似た羽。
光る胸元の宝石。
威力の増した秘奥義。
「ファーストエイド! …まったく、この才能は恨むねぇ」
「はぁっ。相変わらず自信満々だね」
「パイングミちょーだい♪ ほら、俺さまって天才だから?」
「はい。でも残り少ないからちょっと考えて。…気づいてるの?」
降り注ぐ光の柱に粋護陣(すいごじん)で防ぐ。やっぱりライトマント着けてて良かった。
「いーや? またお前が依頼を出したもんだと思ってたんだが」
「今回は違うわ」
駆け出してロイドくんと共にコンボを繋ぐ。敵になると硬いなぁ、元がバランスいいからかな。
さって、どうすればいいんだろう。
「俺さまを倒せるかい? ハニー」
「ゼロス…っ!」
…『新しい記憶』に似てるけれど違う。どうすればいいんだろう。
『別世界のゼロス』を…。
「ローズちゃん、サポートよろしく〜♪」
羽のないゼロスの周りを、黄色い光が包む。
ガードを解いて後ろに跳ぶ。
あ、わたしもいけるな…。
「はああっ!」
どちらかしか選べないのなら、新しいのを作ればいい。それか、両方失くせばいい。
それができないのは世界の理なのかしら。
一言だけで決まる未来。
「ディバイン・ジャッジメント!」
「これで決める!」
かくり、と『別世界のゼロス』が片膝を着いた。
傍により、手をかざす。
何かが入り、穏やかになる感じがする。これは…負? 負の具現化なの?
「っは…だせぇ」
ちらりとロイドがゼロスを見た後、こっちに近づいて『ゼロス』と視線を合わせる。
ちょっとだけ、わたしも距離をとった。
「俺はお前の世界の俺じゃないから、俺が言ったって無駄になると思う。でも、お前の世界の俺はそういう意味で言ったんじゃないと思うぜ」
「…どーいうことよ?」
「たぶん、俺は『俺自身を信じていいのか?』って言いたかったんだと思う。お前なら、ゼロスならきっと分かってくれるんじゃないかって」
「…たぶんねぇ。だったら勘違いするような台詞、言うんじゃねーよ…」
あ、このゼロス腕で顔隠したけどきっと泣きそうなんだ。
「言っただろ。俺はお前の世界のロイドじゃない。だけど…俺ならそう言う」
「だったら…そんな風に言うなよ…」
「コレットとかジーニアスだったら言ったかもしれない。ゼロスだから、俺はそう言ったんじゃないのかな」
ゼロスなら言葉の意味が分かってくれる。それは相手をよく分かっていなければ掴めない真意。
「ま、こいつはバカだからな。崇高な俺さまの脳では理解できなかったってことだ」
黙っていたこっちのゼロスが口を挟んだ。わたし、もうちょっと距離取るべきかな…。
そう思ってたらいいぜって感じに手を上げるゼロスくん。
「――まったく、ハニーにゃかなわないねぇ…」
「そりゃ俺さまのハニーだしな」
「あーもう、2人そろってハニーって呼ぶな! それと俺はバカじゃない!」
『いいや、バカだ』
本人なんだと再認識される。まったく同じ台詞言うなんて。
To be Episode.10
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