複数合ったグループが、ひとつになりつつあった。
急にその数を減らし始めた組織に、何かあったのでは、と思考回路をめぐらす。
神出鬼没な敵が、これみよがしに倒し始めたか。
敵のリーダーが一掃せよと命令を下したか。
全く検討がつかない。
「バンブル」
瓦礫を積み上げただけの簡素な基地で、名前を呼ばれたバンブルは声のした方へと顔を向けた。
赤い体に角のようなものが頭部についている、陽気なトランスフォーマー。
「ブロードキャストじゃん。どしたの?」
倍はあるだろう長身のブロードキャストに駆け寄り、バンブルは首をかしげた。
ブロードキャストはすぐには答えず、基地内を見回してから目線を合わせる。
「他のミニボット達にも伝えてほしいんだけどさ」
「なに?」
「俺っちのグループに入らない?」
バンブルはそのまま、水色の大きな目(アイ)を点滅させていたが、ぷっと笑い出した。
「あはっ! あはは! オイラが? オイラ達がブロードキャストのグループに? なんの冗談だい、ブロードキャスト。オイラ達は確かに小さいから偵察や情報 収集向きかもしれない。でもね」
目元をぬぐう仕草をしてバンブルはブロードキャストを見上げた。
「それだけじゃだめなんだ。いくら情報をあつめたところで、戦わなきゃ意味がない。おたくなら分かるだろ? 弱点を知ってても、そこを攻めなきゃ意味がないんだ」
何も言わず、ブロードキャストはバンブルを見つめる。
2人は以前、同じグループになったことがあった。しかし彼らが偵察から帰ってきたとき、そのグループは壊滅していたのだった。
ブロードキャストはその犯人を見つけるべく別のグループへ、バンブルは同じような目にあった仲間を集めグループを作ったのだ。
「敵よりもどの味方よりも速く情報を集めて、これ以上グループを減らさないためにもオイラは入らないよ」
「……」
「通信係ならアダムスがいる。おたくはそのグループで活躍したらいいよ。知ってるでしょ? ここ最近急にグループが減ったのを」
「…ああ」
背を向け、バンブルは大声で叫ぶ。
「オイラ、もうこれ以上仲間を失いたくないよっ!!」
パラリ、と瓦礫のかけらが落ちた。簡単ではあるがしっかりと積み上げられているらしい。
民間用として造られたサイバトロンはあまりに非力だ。空も飛べず、強力な武器もない。飛べたところでわずかな距離しか保てない。武器を持つことに抵抗を感じないわけではない。結局、2人がいたグループを壊滅させた犯人は特定できなかった。
「…言い方が悪かったかな。正しくは俺たちのグループだ」
頬をかきながらブロードキャストは続ける。
「グループが減ってるのは統一しているからさ。敵にやられた訳じゃない」
がしゃりとバンブルは振りかえる。
「リーダーの名前はコンボイ。サイバトロンの司令官と言われている」
「コンボイ、司令官…」
「彼はミニボット達の協力を求めている。考えといてくれ」
ブロードキャストは真剣な眼差しで、口調で小さなトランスフォーマーに言った。
それ以後、ブロードキャストは現れなかった。
縮小しつつあるグループがひとつの大きなグループになっていることは他の仲間から聞き、自分の目でも確認済みだ。
今にも崩れ落ちそうな建造物。形からして元々は多数のトランスフォーマーが住める、いわばマンションのような所だったのだろう。
数人のグループが辺りを気にしつつ、ひとつふたつと入っていく。
他のミニボット達はブロードキャストの誘いを受けた。中にはリーダーであるバンブルに従うというトランスフォーマーもいた。
デストロンに対抗するためにサイバトロンのメンバーを集め始めた、名前しか知らないリーダー。果たして彼の元へ行っていいことなのか。
バンブルはそっとコンボイのグループがある基地へと忍び込んだ。
まだ、ブロードキャストの誘いを受けた訳ではないし、誰かの話を聞くのも変な情が入ってそうで嫌だった。
小さな体を生かして忍び込むのは、バンブルの十八番でもある。
3体のトランスフォーマーが話しているのを柱の影から見ていると、1体のトランスフォーマーがこちらを見た。慌てて顔を引っ込めたが、怪しいものだ。
「…? 司令官、どうかしましたか?」
「いや。気のせいだったようだ」
その台詞を聞きバンブルは胸をなでおろした。
(あれがコンボイ司令官…)