「バレンタイン?」
新しい基地で、メインモニターに向かってウーマンサイバトロンの一人、ムーンレーサーは繰り返した。
特殊な電磁波で通信している先は地球のアーク。
メインモニターに映るのは、地球人のカーリー。
交流のため、と通信したのがきっかけで同じ『女性』としてウーマンサイバトロン達はカーリーと仲良くなっていたのだ。
時折、通信しては地球のことを教える彼女は『バレンタイン』について話す。
<それで、私達は贈り物を貰うんだけど、日本って国は違うの>
「なになに?」
<好きな人に、チョコレートを渡すのよ。片想いの人は告白もかねてるんだって>
「へぇー! 面白ーい!」
感嘆するムーンレーサーに向かい、カーリーは人差し指を立て、
<ねぇ、私達も作らない?>
と言った。
材料はエネルゴンキューブだが、チョコレート味になっているもの。作り方はカーリーが直接、モニター越しではあるが教える、と。
しかし、長時間の通信は危険であり材料もやすやすと手に入るものではない。
クロミアは反対、リーダーのエリータワンも渋る。
<じゃあ、誰かに届けさせましょう>
カーリーの提案に、クロミア以外が賛成した。とは言っても、エリータワンは最後まで渋っていたが。
どうやってかは分からないが、ウーマンサイバトロン達の元へチョコレートエネルゴンが届けられた。
<それを湯せんにかけて。教えたとおりにすればできるわ>
「一回、溶かすのね」
エリータワンは繰り返し、慣れた手つきでテキパキとこなしていく。
「で、型に入れる…」
ゆっくり、確実にファイアースターも着々と進める。
「あたしはこの大ーきいの♪ って、わぁ?!」
何かの部品につまずき、ムーンレーサーはチョコレートエネルゴンの入ったボウルを手放してしまう。
『<ムーンレーサー!>』
ファイアースター、エリータワン、カーリーが叫ぶ。
しかし、ボウルの中身がこぼれることはなく、こけた本人の目の前にあった。
「気をつけなさいよ、ムーンレーサー」
「クロミア…ありがとう♪」
立ち上がって受け取ると、クロミアは苦笑して去って行こうとする。
「あなたは作らないの?」
「興味がないんです」
エリータワンの問いにクロミアは即答し、消えていく。
3人のチョコレートエネルゴンが完成した。