1番速い者がこの惑星のリーダーとなる。
誰が言い出したかは分からない。だが、昔からそうしてリーダーを決めてきたのだ。
この星――スピードプラネットこと“スピーディア”の。
何回か行われるビッグレース。それぞれが大切だと思う“モノ”をかけ、レースに挑む。不定期に開催されるレース。速さを追求するスピーディアの住人は誰もがその頂点を目指す。
最速の証、プラネットカップをその手にする為に。
今回、異例のリーダーが誕生した。
本来リーダーとは1人だが、同時ゴールということで2人のリーダーができてしまった。それも、双子。
ニトロコンボイとオーバーライド。
ロボットモードではよく見れば違いがあるものの、ビークルモードですらパッと見ではその違いは分からない。例え2人の性別が違えども。
ニトロコンボイはクールなトランスフォーマーとして、オーバーライドは姉御肌なウーマントランスフォーマーとして、その名が知られていた。
彼と彼女の座は誰にも譲らない。そして2人も。
不動の地位。揺らぐことのない速さ。誰もが求め、誰もが極めたいと望んだもの。
いつしか、2人に挑もうとする者は1部を除き、誰も2人に関わろうとしなくなった。誰もが、2人にかなわないとあきらめてしまったからだ。
いくらチューンナップしたところで、2人を抜かすことなどできない、と。
ニトロコンボイとオーバーライドが走れば、道を譲る。塞ご(ブロックしよ)うとする者はいない。もはや日常と化してしまっていた。
満足させてくれる奴はいないのか。
2人の不満はつもりにつもっていった。そうして、誰も関わろうとしない。
速さこそ全て。速さこそ勝利。速さこそ絶対無比そのもの。
頂点に辿りついた者が得たものは、栄光と言う冠と“退屈”と言う日々であった。
「Autobot and Decepticon? Why is?」(サイバトロンとデストロン? 何、それ)
「さあな。だが、久々に楽しめそうだ」
スピードチェッカーを操作していたオーバーライドに、ニトロコンボイは面白い奴らが来たと報告した。どちらもこの星では見かけないトランスフォーマーだと。
「俺達のプラネットカップがほしいんだとよ。なんでもプラネットフォースとかいうのを探しているらしい」
「No Lission. But, this?」(聞かないわね。それで?)
「…俺に勝ったらやると言った。ま、どちらにせよプラネットカップはグレートレースで勝った奴に渡すけどな」
フッとニトロコンボイは笑った。