新スペースブリッジを作り終え、セイバートロン星へと帰還したギャラクシーコンボイはドレッドロックを引き連れ、地球へと来ていた。
約2、3メートルはあるだろうという川を挟む左右の土手。その右側の土手を2人は歩いていた。
ひらひら 舞う花びら
ふわふわ 浮かせよ風
ぱしゃぱしゃ 遊びし鳥
太い幹 照らすのは昼の月
舗装されていない砂地を歩きながら、ドレッドロックは空を見上げた。水色のキャンバスに、水を含ませず白の絵の具をつけた、少し太めの筆でさっとひいたような雲が浮かんでいる。
風は吹くものの、強くも弱くもなく、穏やかだ。
「気持ちいいですね」
「ああ」
長く続く土手を2人はゆっくりと歩いていく。
しばらく行くと、木の枝がゆるやかに曲線を描き川の方へと延びていた。そんな枝をつけた幹が何本もなんぼんも続き、アーチを作っている。
「まるでトンネルのようだな」
アーチの中に入り、ギャラクシーコンボイは花をつけた枝を見上げながら言った。
「桜のトンネル、ですね。それに、この枝は自然とこの形を作っているようです」
出口の見えないアーチの中、そっと枝を掴み目(アイ)の前に持ってくる。枝はいびつに曲がっており、下がってはすぐ上に伸びている。花もみっつほどのひとまとめで先端から、幹や茎からも直接咲いていたりしておもしろい。
「ギャラクシーコンボイ総司令官、見てください。枝から直接花が咲いてますよ」
枝から咲いた桜をさしながら、ドレッドロックは嬉しそうな声をだす。そんな彼にギャラクシーコンボイは微笑み、腕を伸ばして柔らかく花のかたまりを包んだ。
少し力を加えるだけで取れてしまいそうなほど、花の茎は細い。人間でも簡単に取れるだろう。
アイを細め、ギャラクシーコンボイは花から手を放し先を行く。ドレッドロックも掴んだときのように枝を放してやり、彼の後を追う。
桜のトンネルはなおも続いており、まったくといっていいほど終わりが見えてこない。
右側にだけある、太い幹が連なっているだけなのにアーチ状を作り出しているとは。
ドレッドロックは紅のバイザー越しに見上げ感心していた。自然の力とは凄いものだと。
「総司令官?」
ふと、立ち止まったギャラクシーコンボイを追い越したことに気づき、ドレッドロックは振り返った。
「どうされたんですか?」
「いや…この桜はなんといったか、思い出していたんだ」
しゃがんでいたギャラクシーコンボイは、立ち上がり苦笑して答えた。
「行こうか、ドレッドロック」
「っは、はい」
隣まで来たかと思えばすっと手を繋がれ、ドレッドロックは慌てて返事をした。あまりに自然な動作で繋がれたため、文句の言いようもない。
せめて誰にも見られないように祈るしかない。