惑星スピーディアのリーダー、ニトロコンボイコンボイ。
 彼には影武者ともいうべきもう一つの顔というかもう一人いた。
 双子のきょうだい、『オーバーライド』が。

 ニトロコンボイが仲間入りして、オーバーライドも共に地球に来たのだが
Cannot a Hotshot yet run??」(Hotshot、まだ走れないの??)
「ああ…ファストエイドの奴にドクターストップかけられてるしな」
Oh…When do you get possible to run?」(そう…いつになったら走れそう?)
「さあなまあ、もうすぐじゃねー?」
 ロッキー山脈を隠れみのにサイバトロン軍基地の外に出て、治療を受け終わったエクシリオンはカラカラと笑う。そんな彼の姿にオーバーライドはほんの少し頬を染める。
「そしたらまたレースできるぜ! 今度も俺が勝たせてもらうからな!」
「! …No. It is race winner next I’m. Is it win isn’t mean?」(! …次に勝つのは私。私には勝てないわ)
「あーっ! 断言しやがったな!」
 クスクスと笑うオーバーライドにつられてエクシリオンも笑う。
 彼女はなぜか英語で話し、名前も違う呼び方をする。慣れれば話せるかもしれないが、今はまだムリであった。
「…つーかさ、」
「?」
「そのHotshotって呼び方は、止めてくれないか?」
 不思議なもので、双子のニトロコンボイを始め、彼女が英語で話しても全員理解するのだ。(場所がアメリカというのもあるが
…Why?」(なんで?)
Hotshotって、俺の父さんの名前なんだ。だから…」

 旧チームコンボイのメンバー同士を、現チームコンボイは親に持つ。エクシリオンは旧チームコンボイの、ロディマスコンボイを父にホットショットを母に持っていた。
…OK.Uh-… I can call you, Are you name?」(…OK。うーん…じゃあ何て呼んだらいい?)
「エクシリオン。…んー、エクシーでいいかな。皆そう呼んでるし」
Exce…rion?」(エクシ、リオン?)
「ああ」
Excere…」(エクシー)

 確かめるようにオーバーライドはゆっくりと彼の名前を呟く。
「そうだ。覚えたな! ライド!」
 ニトロコンボイとローリ以外に愛称で呼ばれたことの無い彼女にとって、他人から呼ばれる事は新鮮な感じがした。特にエクシリオンに呼ばれることは、嬉しくもあるのだ。

「あ…。悪ぃ、ニトロがそう呼んでたみたいだから…つい…」
 許可を得ずに愛称を呼んだことを後悔し、エクシリオンはとっさに謝る。
 オーバーライドは顔を赤くして、ふるふると首部を横に振った。
…No.…」(…ううん…)
 彼に愛称を呼ばれたことが嬉しくて、なによりもっと彼といたくて、彼女はその場を離れたくなかった。

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