「…ばぁ?」
ある一宅の前にゆりかごが置かれていた。
中には青の強い紫色で真ん中分けの髪形をした赤ん坊が大きな瞳をぱちくりさせていた。
ガチャとドアが開く。
「あとは玄関だけだな」
青っぽい水色の髪にマスクをした男が出て来た。
「ええ」
後ろから出て来たのは、茶色いロングストレートの髪形をし、焦げ茶のチョーカーに二の腕のところがぱかりとあいた上着を着た…男。
「……ん?」
水色の男がゆりかごに気がついた。
『銀河の警護 誕生篇』
セイバートロン星・コントロールルーム内。
『んなっ…!?』
そこにいた、チームコンボイ、ロディマスが目を点にした。
何時ものように誰よりも早く出勤していると思っていたグランドコンボイとインフェルノが遅れてきた事と、インフェルノの腕には赤ん坊。
「し、司令官…どうしたんです?その赤ん坊は…」
スカイファイヤーが聞く。
「私にもわからない。今朝、ドアの前にゆりかごが置いてあったからな…」
苦笑してグランドコンボイは答えた。
「ちわー…、ぁ。生まれたんスか」
パシュ、とドアが開くと黄色い髪の青年が入ってきた。
「どいうことだ? ラディバック…」
「その赤ん坊、コマンダーの子供っスよ。マトリクス…って云いましたっけ。コンボイコマンダーのマトリクスから生まれたんス。多分、サイバトロン全員でスーパーリンクした時に誰かのスパークと共鳴、スーパーエネルゴンで出来た太陽の光を浴びたことで、その赤ん坊が生まれたんですよ」
「…今になって、か?」
「スパークが生まれるまで時間がかかったと思うっスよ」
『じゃあ…その赤ん坊は…』
間違いなく、グランドコンボイとインフェルノの、子供。
「………」
呆然と立ち尽くすインフェルノ。
グランドコンボイも固まったままだ。
「書類、置いておきます」
そう言ってラディバックは立ち去った。
しばらくして、インフェルノが仕事場に来なくなった。
どうしたのかとグランドコンボイに訪ねれば「育児休暇をとらせた」との事。
たまに弁当を持ってくる以外にインフェルノの姿は見れない。
「ところで、お子さんの名前は決まったんですか?」
とホットショット。
「ああ。銀河の平和を願い、ギャラクシーと名付けた」
「へぇっ。インフェルノと相談してですか?」
「ああ。……ウイングセイバー? ああ、分かった。すぐ向かわせてくれ」
「司令官?」
「すまない、ホットショット。通信が入ってな。…インフェルノが直に来る」
数分後、ドアが開いた。
赤ん坊をおんぶしたインフェルノが現れた。
「すまないな。慌てて出たからな、今日は」
「いえ。かまいません。ですが、最近多いですよ。その辺りは注意して下さいね。ギャラクシーの育児休暇の意味がなくなります」
「分かった」
「ギャラクシーコンボイ、ほら」
ルームにいた全員が驚いた。
「ばぁ」
「ああ、頑張るな」
小さな手をくにくに触ると、おんぶしたインフェルノは退室した。
「しっ、司令官! コンボイって…!」
「ん? ギャラクシーには私の跡を継いでもらおうと思ってな」
「聞いてないですよぉ!ライオコンボイ殿だって名前まで受け継がせてないじゃないですか?!」
ライオコンボイのマトリクスになんらかのエネルギーが影響し、生まれたのがライオJr.だ。
「ライオの子供は名付け親がいるだろう」
そういう事じゃない、とスカイファイヤーを含む全員が突っ込みたかった。
結婚して、子供がいて、育児に追われる夫婦。
それが今まさにグランドコンボイとインフェルノだった。