密林の中、フレイムコンボイはドラゴンのビーストモードで散歩していた。
 今のアニマトロスは治安が悪い。襲われても不思議はないのだ。しかしそういう場所だからこそ、命が助かる時もある。故に森の中を行くのが安全なのだ。
 湖のほとり手前で、フレイムコンボイは果実の木に近づいた。
 見たこともない動物が、木の上に巨体にもかかわらずひょいひょいと上って行き、枝にぶら下がった黄色い果実を手に取る。
 この星にまだあんな動物が生き残っていたのか、とフレイムコンボイは木の下を通り過ぎようとしたが、手を滑らしたのか果実のひとつが彼の頭上へ落下してきた。
「すまない、手を滑らしてしまった…」
  ぶるるっと首をふり、頭の果実を振り払う彼に、木から降りて来た見知らぬ動物は申し訳ない声を出した。
「お前…」
 全身を黒い毛皮で被われ、4足歩行をする手足は先が流さの違う小さな5本に別れており、丸い爪がついていた。顔はシワの入った額に目が2つ、鼻は穴が2つあり口には犬歯もあったが小さい。色は濃い灰色。
「喋れるのか。では、君はサイドスの知り合いなのかな?」
「…知ぃってェいるのか?」
「この星で私が最初に出会った、この星の住人だ」
 サイドス。皆から先生として慕われている老人だ。フレイムコンボイは彼の弟子のひとり。
 見知らぬ動物に警戒心を抱きながら、フレイムコンボイは湖へ向かった。隣を動物が歩いて行く。
「…何故、ついてくる」
「行く方向が同じだけさ。この星には暫くいないといけないからな」
「運が悪ィな、アンタもよォ。この星はァ生きていくので精一杯な奴らがぁ多いってぇのに」
「聞いたさ…だが掟というのは何処にもあるものだ。自然界には自然界の。我々には我々の、な…」
「お前さん、一体何者だ? まるで全てを分かっているみたいだが…」
「そうか? 全てを知っているのは私達の神だけさ。私はただ、知識を持っているにすぎない。まだほんの1部だがな」
 湖の側まで来るとフレイムコンボイは、
「トラアァンスゥフォームゥぅ!」
 と変形した。
「変身!」
 続いて動物も変形する。
 銀色の聴覚部に、鼻の上と顎にはガードらしきパーツがついており、青い頭部に透き通るようなレッドアイ、胸には赤い球体のような模様が見える。ずっしりとした体形から身軽そうなボディへと。 2人は腰を降ろした。
「一体何処から来たんだ? アンタはよォ」
「…信じて貰えないかもしれない」
 戸惑った顔で動物から変形したロボットは言った。この星とは別次元の宇宙の別時間から来た、と。
「今、<エンシェント>が元の世界に戻れるように準備をしてくれている。私は準備が終わるまで此処にいる事にしたんだ。下手に動いては相手の思うつぼだからな」
「不思議なヤツだなぁ、見ず知らずの俺にィそんな事話していいのかぁ?」
「最初は警戒したさ。”ヤツ”と同じビーストモードだったからな。だが君からは敵意も殺意も感じないし、何よりサイドスの知り合いだ。疑うのは失礼だろう?」
 にっこりとそのロボットはアイを和ませ笑った。
「ほう、だから話したと言うのかぁ?」
ブンッ!
 手に持っていた武器(ヘルフレイムアックス)を振り回し、槍のように尖った先をロボットの鼻先へ突き付ける。ロボットは微動だにしなかった。

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