ホットショット“殿”と。
 久々に呼ばれる敬称に、照れくさく恥ずかしくもありくすぐったくてやめろ、と苦笑して言っても相手はやめなかった。
 今なら、親友の気持ちが分かる。ああ、お前もこんなんだったんだなー、と。
 憧れて、追いかけて来て。似てるなぁと思ったけど実はそんなに似てなくて。もしかしたら昔の俺? なんて考えたりもして。
 必死に頑張る姿に、いつのまにか手を貸したくなった。そう、ホットショットは思い芽生え始めた感情に気付いた。最近になって、だ。
「うお、マジか…」
 大型なのに小型のような性格。ちょっと誉めれば調子に乗って失敗する。けれども決してあきらめない。
 かわいーなーとは思っていたが、それは先輩としての。
「今アイツに会ったらヤバイ…」
 オーシャンシティのパーセージを歩いていると、前から相手がガシャガシャ来る。
 タイミング悪りぃー、と思いながら戻ることもできずそのまま歩く。
 ピタリと2人は立ち止まった。
「ホ、ホットショット殿…」
「……」
 妙な沈黙が続く。
 なんでどもるんだよ、と笑い飛ばしたかったがこの気持ちのままでは言えない。
「…休憩か?」
 もっと気の聞いた台詞言えよ、と後悔するが相手は一瞬跳ねたものの頷いた。
「ホットショット殿は?」
「タワー内部の報告にな」
「そうでありますか。…あ、えと自分はこれで…」
 何か話したかったようだが、話題が見つからなかったのか。そう思いながら早足で歩く背に声をかける。
「ロードバスター」
 ギギギ、大昔の旧式ロボットのような音を立てて振り返った相手に思わず笑みがこぼれた。
「明日暇か?」
 我ながら間抜けな問いだ。いつ、あの正体不明のトランスフォーマーが来るか分からないのに。
「え、ええまぁ…」
「地球時間で午後1時。門のところに来い」
「…りょ、了解!」
 きちんと振り返って敬礼する姿にかわいいなぁとまた思ってしまう。頷けばほぼ同時に反対方向へと歩いていく。
 なんで後輩に、と思うが仕方ない、とも思うのだ。
 かわいすぎる。

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