夜という闇に映えるのは月でも星でもない。
白桃色の妖精。
太いこげ茶色の幹の下に、レジャーシートを広げてキッカー達は重箱をつついていた。
まだ気温も低いこの時季にキッカーはマフラーを付けていた。彼の他にはグランドコンボイ、スカイファイヤー、ホットショット、インフェルノ、ロードバスターが同じように精製されたエネルゴン製の食物を手にする。
「キッカー、ミーシャとサリーは?」
「ミーシャは急用。サリーはテストが近いってよ」
ホットショットの質問に答えつつ、かまぼこに箸をのばす。
本来ならば、その二人も一緒にミーシャ手作り重箱を食べているはずだったのだが…。
「たまにはこういうのもいいな…」
「お前等、戦ってばかりで忘れてんじゃねーの?」
「イタイとこつくよなぁ、お前は」
感想を呟くインフェルノにキッカーは箸でビッとトランスフォーマー達を指し、スカイファイヤーが突っ込む。
「ははは…。まぁあまり休息を取る暇がなかったからな。今はこうして、風情を楽しもうじゃないか」
液状のエネルゴンが入ったコップを片手に、グランドコンボイは幹の上を仰いだ。
「コンボイ、オッサンくせえよ…」
「ん? そ、そうか??」
重箱の中身も最初の頃より大分減り、レジャーシートに円を作ってキッカー達は座っていた。
サアッと吹いた風に、「寒ッ」と体を抱きしめるように擦るキッカー。ギ…、と黒い巨大な手が壁を作り見上げればロードバスターの顔。
へへっ、と笑う顔に全く…と壁の手に持たれる。
「あっ、おい!」
「背もたれが欲しかったんだ。サンキューな、相棒」
別の意味で礼を言われ、ポリポリと鼻の頭を描くロードバスター。他のメンバー達は大笑い。変らないな、と。
舞い散る花弁にキッカーは太い幹の上を見た。
暗い中に咲く、白桃の花。
「俺、さ…」
眠っていた動物達が目を覚ます季節。
「お前等トランスフォーマーは大嫌いだけど、ちょっと救われた気がする」
「キッカー…」
「変な能力のせいで、宇宙が苦手だった。怖かった。でも、」
明るい色は微笑み。