トランスフォーマー達の病院・メディアカルセンター内は戦いが終わった後だというのに、慌しかった。
「主力低下中! サブに切り替えろ!」
「重傷プログラムを優先する! 治療コンピューターのプログラムを“Head”に切り替えろ!!」
 特殊な型をしたいくつものコードがベッドに寝かせられた者に結ばれ、音を立てる。
「先生! これは…!」
「なんてことだ…トランスフォーマーにこのような事が起きるとは……」
 無数のコードは徐々にその数を減らしていった。


 手術室のランプが消え、待合室には担当医が現れた。
 待合室には4人のトランスフォーマーと人間が1人いた。人間は医者に駆けより
「どうだ!? 無事だよなぁ!?」
 いてもたってもいられず、噛み付くように叫んだ。それをなだめるように水色の髪の男がゆっくり、力強く尋ねた。
「現状を説明してくれ。どうやってここへ運ばれて来たのかをも」
 医者は一度視線を外したあと、男に向きなおって答える。
「全体的に大ダメージでしたが、修復しました。2ヶ月程、入院すれば完治するでしょう。しかし…」
「…?」
「頭脳部の1部メモリーが抜き取られています。ウイルスは検出されませんでした。あなた方の事は…覚えていないと」
「…日常には戻れるのか」
「ペンを持つ、書く。パネルを叩くなど、処理機能は正常です。――チームコンボイの事だけを忘れています。自分が誰で何者かをも」
 医者がその場を離れたあとも、沈黙が続いた。
 喪失したのは記憶を司る記憶回路。その中でも重要な基本情報を記録しておくものだ。
 それをどうして失くしたのか、聞けば彼はある場所に傷つき倒れていたと。そばには黄色い髪に、オールドグリーンのジャケットを着た青年がおり、通報したのだと。
 助けたところを見ると、敵ではないようだが。
「記憶喪失かよ…」
「きおくそうしつ? キッカー、何だそれは?」
 頭を抱えるキッカーに、青いハネッ毛の青年が尋ねる。
「あ。ああ。人間でも事故とかにあって、そのショックで記憶を忘れちまうことがあるんだ。人によって、忘れる内容は異なるけどな」
「治す方法は?」
 今度は水色の髪が言う。

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