これで失うのは何度目だろうか。
完全ではないにしろ、“亡くなった”と感じるのは。
思えば友人は皆、炎に包まれていないか? 気のせいかとホットショットは自嘲した。
単なる偶然だろう。1人は敵の攻撃でやられたのだから。
戦場に立つ以上は、“死”を覚悟しなくてはならない。味方も己も。目的の為に、生きる為に戦い続ける。ホットショット自身、前線に立ち戦い続けてきた。ある部隊では命令違反を犯したこともある。だが、それらの評価を得て、『ユニクロン』攻撃部隊の総指揮を取ったり、総司令官代理を務めるほどとなったのだ。違反にしても間違ったとは思っていない。それは、今の総司令官も承知の上だ。
そうでなければ、ホットショットはこの場にいないのだから。
オーシャンプラネットに建てられたエネルゴンタワー。
「ロードバスター」
ホットショットは電気の点いていない部屋を覗き、廊下(パッセージ)の明かりのみで照らされた後輩を呼んだ。
写真立てが2つ、左側の机に立てられているだけで他はベッドのみという簡素な部屋。
ベッドに腰掛けていたロードバスターはホットショットの方を振り向き、名を呟いた。
「ホットショット殿…」
「俺と付き合う気はあるか?」
軽く微笑む。
小首を傾げる彼に、その前に、と入室の許可を求める。己を尊敬していると豪語する後輩は少し慌てたものの、すんなりと許可した。
明るくなった部屋の扉を閉め、2人はベッドへ腰かける。
「あの、ホットショット殿?」
「ん?」
「どうしたでありますか?」
突然訪れて、何も言わないまま入室した。ロードバスターが困惑するのもムリはない。
「少し、お前と話がしたくてな」
本題に入る前に、と。
先日の戦いで、サイバトロンは防衛参謀・インフェルノを失った。ギリギリ、トランスフォーマーの魂というべきスパークは無事で今はセイバートロン星にある。しかしインフェルノがそうなった過程には複雑なものが絡み付いていたのだ。
「あいつは自分の意思とは関係なく、デストロンのプログラムを注入された。だが、必死にサイバトロンであることを望み続け、作戦を練った。それは分かってるな?」
「……」
こくりとロードバスターは頷いた。あの戦場には己も居た。
「仮に強制でなくとも、インフェルノがデストロンになったら…ロードバスター。お前はどうする?」
「え…」
「強制的にデストロンになった場合はおそらく自力で戻るだろうな。この前みたいに。だが、自らの意思でデストロンとなった場合――…戦えるか?」
味方が突然敵になる。戦場では何が起きるか分からないと、実践で学んできた。しかしインフェルノの場合は前兆があったため、覚悟はできていた。できなかったのは途中、はぐれてしまった緑色の武人のみだ。しかし彼は自ら望んでなったのではない。