「お前に、こんなこと聞くのもあれなんだが…」
休日の午後、地球時間で3時。俺は自室に招きいれた親友を仰ぎ見た。
イスに座ったまま、俺は親友――インフェルノをベッドに座らせる。
赤いボディに灰色のフェイス。橙色のアイは磨かれたように光っているはずなんだが…今は明度が落ちている。俯いたままで、さっきの言葉。
司令官と何かあったな。
「構わねぇよ。俺にできることならなんでも答えてやるよ」
「すまん」
親友ってのもあるが、それ以上に俺はコイツに手を貸してやりたい。応援してやりたいんだ。
俺は同姓ながらに、インフェルノに惚れていた。告白もした。でもそれより前に本人の気持ちを知ったから、結果は見えていたけどな。
だからあんな言い方したんだろう。俺が想ってることを知ってるから。
「最近…司令官の気持ちが分からないんだ…」
「気持ち?」
インフェルノはサイバトロン総司令官と付き合っている。上司と部下っていう関係だけど司令官は自由主義なもんで、職場恋愛とかも自由。隔てるものも何もない。
まぁそんなワケで2人は付き合ってて、何か問題があると俺や副司令が2人の仲を取り持つ。こうやって相談役も引き受ける。
惚れた奴の幸せを願いたいもんじゃないか?
「あの人は立場上忙しい。今日のように休みの日はのんびりしている」
これって惚気入るか?
「司令官の好きなようにさせている。だが、私がいるときもどこか上の空なんだ」
入ったよ。司令官は天然だが、こいつもとはな。本人にそのつもりはないだろうし。
「私が部屋に居ても、一定の時間になると仕切りに時計を気にする。彼の好きなようにさせたい、気はつかわしたくない。しかし、毎回ともなれば不安になるんだ」
「その時間、何かあるのか?」
時計ってことは外の景色を見るためかと思ってたんだが、どうも違うみたいで、
「……テレビがな」
答えはこれ。
テレビって…何かやってたか?
「新番組で、絶景特集をしているんだ。地球の」
あ、何か読めた。
「地球の景色は素晴らしかった。だが、私といる時くらいは…っ」
肩を震わして声を抑えるインフェルノ。あぁーこりゃ怒ってるな。
恋人と一緒にいるにもかかわらず、楽しみにしている番組を見るため仕切りに時間を気にする。そんな司令官の気持ちが分からなくなったってことか。
「そういうことか。…何か飲むか?」
とりあえず、落ち着けないとな。抑えてはいるが何時爆発するか、分かったもんじゃない。
「すまん…。ミルクと砂糖たっぷりのカプチーノを頼む」
「了解」
自室を出て、俺はダイニングルームへと向かう。着いて注文の品を準備する。
トレーにソーサー付きコーヒーカップを2個乗せ、お湯を沸かす。その間にドリップ類を準備し、沸く一歩手前のお湯をいったんカップに注ぐ。湯を捨てドリップの上からまた注ぐ。
インフェルノの分に砂糖を6杯、俺のに3杯入れ、かき混ぜる。片方には泡立てたミルクをたっぷり入れてやる。
……カプチーノか、コレ? 甘すぎるんじゃないか?
仕方ない。あいつは大の甘党だしな。一応、追加用の砂糖も添えておく。