セイバートロン星の上空を飛び回る1機のステルス。
 ビークルモードのウイングセイバーだ。
 黒い狼を見つけるには、影になっている場所に注意しておかなくてはならない。
 色が溶け込んで見えないからだ。しかし、時間が経つにつれて移動しなくてはならない。陽の傾きによって、影の出来具合が異なる。そうなると暗闇に潜む相手は動かざるおえなくなる。
 そこが、狙い目。
(あれは!)
 動く影をウイングセイバーは捕らえた。


 射撃訓練場にインフェルノはおり、動く的に何発か撃っていた。
 全て当たって、壊れた。
「射撃の名手復活まであと1歩か」
「ホットショット…」
「お前、仕官学校時代からそう呼ばれてたんだよ。あとは実戦だけだな」
「銃の腕ならお前の方が上だろう。私は…」
「ストップ! お前はお前だ。記憶がなかろうと自然体でいるのが一番いいんだ」
 他人になる必要はないと。
「ムリして以前のようにふるまうなよ。それこそお前も、俺達もつらい結果になっちまう。ゆっくり、慣れれば良いんだよ」
 仲間だから、親友だからこそ、ホットショットは言った。
 10年前に味わったことのない、この事態。彼自身も正直、困惑していたのだが。
「……お前には話しておくか……」
「ん?」
 かしゃりとインフェルノは右腕を下げた。


 ババッ
 銃音が響き渡る。
 ウイングセイバーの声が大きくなる。
「なんとしても捕まえろ! メモリーブロックを取り戻すんだ!」
 唸る狼。特性を生かして逃げ回る。
 逃げ回る狼の前に1台の車が止まった。
 クリームホワイトカラーの小さい、見かけないタイプだ。
「トランスフォーム」
 車は変形し、現れたのは黄色い髪にオールドグリーンのジャケットをはおった青年。
「逃げ場はない」
 風船ガムを膨らませながら青年は言った。
 黒い狼の後ろには、ビークルモードのウイングセイバー率いるサイバトロン兵士達。
 左右は見上げんばかりのビル。
 グルル、と唸っていた狼だったが、
「トランス、フォームッ!!」
 叫び、変形する。
 全身黒づくめで大きな鎌を持っており、例えるなら…死神のような。
 耳は狼だったが。
「虫が、獣を捕まえられると思うな」
 死神は巨大鎌を一振りし、突風を起こして隙間を駆け抜けて行った。
 ビークルモードのウイングセイバーはバランスを崩し、青年と他のメンバーは飛ばされないよう踏んばるだけしかできなかった。
 風がやむと、狼の死神はいなかった。

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