地球時間午後3時。私は親友の部屋を訪れた。
「お前に、こんなこと聞くのもあれなんだが…」
 椅子に座ったままの親友――ホットショットを見る。するとベッドに座るよう、誘われた。
「構わねぇよ。俺にできることならなんでも答えてやるよ」
「すまん」
 断り、私は彼のベッドへ腰掛ける。そして口にする。
「最近…司令官の気持ちが分からないんだ…」
「気持ち?」
 私はサイバトロン軍総司令官と付き合っている。上司と部下ではあるが司令官は気にしていない様子だった。そして私も。
 時折、悩み事を抱えるとこうしてホットショットや副司令に相談しに行く。私の場合は前者が多い。よき理解者だ。
 だが、毎回相談に乗ってくれる親友に私は胸が痛む。彼は私に告白してきた。そのときの私はすでに司令官へ特別な感情を抱いており、彼のことは親友以上に思えなかった。だからこうして私達の仲を応援してくれる彼に心痛める。
 けれども、1人では解決できないこともありこうして相談に来ることがある。
「あの人は立場上忙しい。今日のように休みの日はのんびりしている」
 司令官の好きなようにさせているのだが、私がいるときもどこか上の空だ。
 段々と己の感情が押さえきれなくなるのが分かる。そう、私の悩みは司令官と休日を過ごすときのことだ。
「私が部屋に居ても、一定の時間になると仕切りに時計を気にする。彼の好きなようにさせたい、気はつかわしたくない。しかし、毎回ともなれば不安になるんだ」
「その時間、何かあるのか?」
「……テレビがな」
 馬鹿らしいと自分でも思うが、気になる。
「新番組で、絶景特集をしているんだ。地球の」
 司令官はとても楽しみにしていて、私自身の性格からしても止めろとは言えない。笑うなら笑ってくれ。
「地球の景色は素晴らしかった。だが、私といる時くらいは…っ」
 テレビ番組に嫉妬しているなんて馬鹿ばかしい、と。
 段々と語気が強くなるのを感じる。いつ爆発してしまうか分からない。
「そういうことか。…何か飲むか?」
「すまん…。ミルクと砂糖たっぷりのカプチーノを頼む」
「了解」
 ホットショットは部屋を出て行った。彼の気遣いに感謝する。
 しばらく彼の出て行った扉を見つめていたが、ベッドにある枕を抱きしめた。ああ、もう胸が苦しくて仕方がない。どうして司令官は私が一緒にいてもテレビの時間を気にするのだろう? 確かに地球は素晴らしかった。そしてその景色を教えてくれたのは他でもない司令官だ。だからこそ、特集は見逃せないのだろう。
 しかし・・・恋人と一緒にいるときくらいは、忘れてもらいたいものだ。せめて予約録画を。
 だめだな・・・こんな調子では。

next